「ロントン(1)」(2022年07月04日)

lontongは白飯の食べ方のひとつだ。バナナ葉を円筒形にして中に白米を入れ、沸騰して
いる湯の上で数時間蒸して作る。バナナ葉の色と香りが円筒形の飯に移り、色は見た目が
あまりよくないが、独特の香りがして旨さを感じる。食べるときはその円筒形を切って厚
めの円盤状にすることが多い。サテ・グライカンビン・ルジャッなどはたいていロントン
と一緒に食べる。

ロントンは昔からヌサンタラの各地で作られて来たが、もともとはジャワの食品だったよ
うだ。白飯を食べるよりも、圧縮成形された香りのあるロントンを好むひとも多い。わた
しもそのひとりだ。


このロントンが華人プラナカンの陰暦正月の必需品に摂りこまれた。陰暦正月の祝祭期間
が終わる15日目に食されるLontong Cap Go Mehがそれである。チャップゴメとは漢字
「十五冥」の福建語読みで、冥は夜を意味している。つまりそれは満月の夜なのだ。

昔この陰暦正月祝祭締めくくりの満月の夜は、どの家庭もたいていのひとが街に繰り出し
て大通りにあふれ、商店や茶店カフェ食堂なども稼ぎ時になって、深夜までたいそう賑わ
ったそうだ。

特に若い男たちにとって、うら若い娘がおおぜい着飾ってお祭り気分で大通りに出て来る
のだから、将来の伴侶の品定めのチャンスになっていた。みんながウキウキと夜が来るの
を待つこの日は、夕食を家で食べる場合は簡単なものになりがちで、ロントンとオポルで
夕食を済ませるひとが多く、それがロントンチャップゴメという料理レシピになったとい
う説を語るひともいる。

ロントンチャップゴメという料理の標準版は、ロントン・オポル汁・むしり鶏肉・卵・サ
ンバルゴレン・クルプッから成っている。そこに大豆の粉が振りかけられ、またヤシの果
肉を削っただけのドチャンdocang、あるいはヤシの果肉を削ってヤシ砂糖を混ぜたアビン
abingが振りかけられたりする。


秋の満月の夜を楽しむときの食べ物は、言わずと知れた中秋節の月餅だ。月餅はインドネ
シア語でKue Bulanと呼ばれており、クエブランはインドネシアのプリブミにとっても季
節の風物詩になっている。それと同じように、陰暦正月の満月の夜はインドネシアでロン
トンチャップゴメがやはり季節の風物詩になっているのである。中国大陸にロントンチャ
ップゴメはもちろん、無い。

レストランスマランのオーナーであるヨンキー・ティオ氏はロントンチャップゴメの由来
について、華人プラナカンがチャップゴメにロントンを食べるのは、ムスリムがルバラン
にketupatを食べるのと同じなのだと語る。

遠い昔から、プリブミがルバランを祝うとき、隣人や親せきにクトゥパッ・汁・おかずを
セットにして贈った。隣人や親せきに華人プラナカンがいるムスリムも決して少なくない。
華人プラナカンも陰暦正月に際して、ロントン・汁・おかずをセットにしてお返しをする
ようになった。

クトゥパッは若いヤシの葉を編んで箱型にし、そこに白米を入れてロントンと同じような
圧縮成形飯を作る。クトゥパッは方形であり、ロントンは円筒形だが、両者は兄弟分だ。
ロントンを切ると円盤状になる。それが満月の象徴だ、とヨンキー氏は語った。[ 続く ]