「ヌサンタラの麺(8)」(2022年07月20日)

インドネシア共和国の国民食のひとつになった即席麺の食べ方に関して、国民からさまざ
まな提案がなされている。麺の茹で方にステーキのようなレア‐ミディアム‐ウエルダン
といったバリエーションを持たせ、それぞれの食感の違いを楽しみながら食べることもそ
のひとつ。それとはまた別のスタイルとして、即席麺にネスレのココクランチを振りかけ
たり、あるいはアイスクリームをトッピングにして食べるようなことも行われているそう
だ。食の世界のクリエーションは実に心弾ませるものであるにちがいない。


ヌサンタラにはさまざまなバッミがある。郷土色を持つものもあれば、小麦粉でない地元
素材で作った麺に郷土色の印象をからめているものもある。

ミージャワと言うひとの方が多くなってきたbakmi Jawaは甘味が強いから、ジャワ人でな
い場合は好き嫌いが分かれるようだ。茹で麺が主流になっているが、ミーゴレンももちろ
んある。バッミジャワの茹で麺はジャワ語でbakmi godhogと言う。

インドネシア語ではしばしば、茹で麺mi rebusと汁麺mi kuahが同義語で用いられること
がある。茹で麺とは基本的に、茹でたままで油炒めされていない麺を指しており、多量の
汁を入れるもの、少量の汁を入れるもの、汁を入れないものの三種類に別れる。

一方の汁麺はインドネシア語ウィキでスープに麺が入ったものと定義付けられている。そ
の感覚はかつてわたしがKLM機内で体験した、夜食のカップ麺をオランダ人スッチーが
スープと呼んでいたものに瓜二つだ。それが公認されているかどうかは別にして、インド
ネシア語も日本語も汁麺とは茹でた?と多量の汁の組合せを指し、少量の汁あるいは汁無
しは汁麺と呼ばない方が妥当なように感じられるので、茹で麺という言葉を非スープ感覚
のものという意味で使うことにする。


バッミジャワに使われる麺はmie lidiと呼ばれるヤシの葉脈のような麺、卵?、福建麺と
呼ばれる黄色い太麺などであり、すべて小麦粉麺である。たいてい、少量のビーフンが加
えられる。麺には赤白バワン・ククイ・コショウなどが使われたブンブが絡められ、具は
野菜と卵やアヤムカンプン肉をむしったものが載る。バッミゴドッの場合は濃い汁が麺の
下半分を埋めるくらい入る。

バッミゴドッの変種と言えるbakmi nyemekというものもある。nyemekはジャワ人ですらニ
ュムッ・ニュメッ・ニェメッの三種類で発音しているくらいで、きっと「正解はこの世に
ひとつしかない」論者を戸惑わせることだろう。とりあえずニュムッと表記しておこう。

ニュムッはウエットでもなくドライでもない状態を意味し、食べ物や土壌などを形容する
のに使われる。バッミのニュムッな状態と言えば、ミアヤムで汁無し状態の茹で麺がブン
ブや具と一緒に丼に入っているあの状態を指している。つまりバッミゴドッに濃い汁を入
れないものがバッミニュムッということになるのだろう。

バッミジャワ食堂では、バッミゴドッにしろバッミゴレンにしろバッミニュムッにしろ、
追加の具をオプションで頼むことができる。用意されているのは、アヤムカンプンの腿肉
・頭・尾骨・キンカン・砂嚢など、あるいはバチュムにしたタフ・テンペ、ウズラ卵の串
刺し、ジャンボサイズのンピンなどだ。


それら三種のバッミは、まず麺に熱湯をかけるか、あるいは熱湯の中で湯がかれる。その
あと、ゴレンにするかどうかで手順が分かれる。ゴドッとニュムッはどちらもチキンブイ
ヨンをかけて煮込むので、単に水分の量が違うだけということになるのかもしれない。
[ 続く ]