「ヌサンタラの麺(12)」(2022年07月26日)

麺を沸騰している鍋で2〜3分茹で、取り出して水気を落とす。別の鍋に油を置き、ニン
ニクとトウガラシを香りが立つまで炒める。そこにキャベツのみじん切り・ネギ葉・牛の
ブイヨンの素・醤油・甘醤油・酢を加える。

更に牛のブイヨンの汁を加え、溶き卵を入れて均等にかき混ぜてから麺を入れて混ぜ、十
分に熱が通ったら取り出して皿に盛り、目玉焼きとルンダンをむしったものを載せて供す
る。牛のブイヨンの汁はたくさん入れないほうが良いだろう。


ムラユ人の麺も魚が使われる独特のものだ。アナンバス群島の郷土料理であるmi Tarempa
はスマが使われる。タルンパは南シナ海に浮かぶアナンバス群島の首府になっている町だ。
その町の郷土料理とされているミータルンパは辣くて、そして魚の味覚が濃い。地元では、
漁されるスマに不足の起こったことがないそうだ。

ミータルンパの麺は黄色く平たい自家製の麺だ。麺自体にスマの旨味とトウガラシの辣味
が混ぜ込まれているので、独特の味覚を感じることになる。その麺がたっぷりトウガラシ
を含んだブンブで料理されるために、ミータルンパはともかく辣い。辣味に弱い客は辣さ
を減らした麺にしてもらえばよい。そこに乾いたスマの身の細切れあるいはむしり肉と生
のモヤシが載せられて、上からバワンゴレンとネギ葉もしくはセロリ葉の細切れが振りか
けられる。

本場のミータルンパは甘醤油を使わないが、バタムなどへ進出した店は甘醤油を使うとこ
ろもある。進出先に住んでいる客たちの中にジャワ人が多ければ、自然とそんな方向に向
かうことになるだろう。バタムなどではワルンの他にコピティアムでも売られているので、
だれでも容易に口にすることができそうだ。

ミータルンパは基本がミーゴレンだが、バリエーションとしてのミールブスも常にある。
ただしミールブスも文字通り、炒めない茹でた麺を意味していて、汁麺と呼ばれる雰囲気
ではない。ヌサンタラの麺料理というのは、どうやら汁麺はあまりなくて、上で見たミー
アヤムのように麺を味わう食べ方が基本コンセプトになっているように思われる。


アナンバス群島では、豊富に獲れるスマの魚肉を使う料理が地元にたくさんある。lempa, 
nasi gadang, luti gedang, ngo hiang ikanなどだ。料理とはいっても軽食の印象が強い
食べ物である。それらはたいてい食堂のテーブルに置かれていて、注文した料理が運ばれ
てくるまでのアピタイザーによく使われる。あるいは一般家庭で、朝食をそれで済ませる
ところもあるそうだ。ミータルンパは昼食や夕食に適している。

ルンパは他地方でlemperと呼ばれているものであり、スマ魚肉のそぼろが中に詰まってい
る。ルンプルはヌサンタラのどこにでも見ることができる。片手に載るくらいのサイズに
長細く成形したモチ米飯で塩味の具を包んだものであり、その全体がバナナ葉で包まれて
いる。どこでもおやつとして扱われている。

ナシガダンはスマ魚肉を使ったおかずと少量の飯がバナナ葉に包まれたものだ。ヨグヤカ
ルタでナシクチンと呼ばれるものと似通っている。ルティグダンは揚げパンであり、中に
スマ魚肉を使った具が入っている。

~ゴーヒアンは5種のスパイスの混ぜ合わせを意味する五香の福建語読みだ。五香を使っ
て祖国で料理していた華人はヌサンタラに来て地元の素材で似たようなものを作り、それ
を同じ五香という名称で呼んだから、中国の五香とインドネシアの五香は中身の一部が違
っている。ただ効果はよく似ているから、そう気にしないでもよいように楽天家のわたし
は思うのである。[ 続く ]