「ヌサンタラの竹筒料理(3)」(2022年08月24日)

竹そのものは人間が食べるものでないとされている。竹あるいは笹を食べる動物が何種類
かいるそうだが、タケノコ以外の竹の部分を食べる人間は果たしてこの広い世界にいるの
だろうか?

言うまでもなく、タケノコはインドネシアでも食べられている。たいてい薄切りにしたも
のを茹でて毒性を除去し、きれいに洗ってから料理の素材として使われる。ココナツミル
クとスパイス類を混ぜた鍋にタケノコを入れて煮ると、グライルブンができる。野菜スー
プのサユールロデにタケノコが入るし、ルンピア(春巻き)にも使われる。タケノコのア
チャル(漬物)も人気のある食べ物だが、若竹の茎の芯でアチャルを作ることもあるそう
だ。竹を食べる人間もやはりいたのだ。

バリのピ~ギッ竹と違って、若竹の茎から水を採ることもヌサンタラで行われているとい
う話だ。雨季には竹茎の含水量が高まるために、その水を集め、そしてそれを発酵させて
アルコール飲料にして飲むという話だった。ところが、この話の詳細記事を探したものの
見つけることができなかった。世界のどこか他の土地で同じようなことを行っているひと
びとがいるかもしれない。


大きくて太い老齢の竹はヌサンタラで、鍋や釜のような調理器具として使われてきた。円
筒形の竹筒の中にスープや米や他の料理素材を入れ、それを火のそばに立てかけて加熱す
るのである。この調理法を使うと、鍋釜で作ったものよりもユニークな風味が愉しめると
世間一般で言われている。竹筒が持っている化学成分が火によって食べ物に放出され、そ
れが食べ物の風味を美味しくしているのだそうだ。竹筒を使って調理されるヌサンタラの
食べ物には、次のようなものがある。

[Lemang]
ヌサンタラの竹筒料理の筆頭はルマンだろう。ルマンは中にバナナ葉を敷いた竹筒に米と
ココナツミルクを入れて、火のそばで2〜3時間焙る。その間、中身に均等に熱が加わる
よう、竹筒は時間を置いて回転させる。
使われる米は白米・赤米・黒米・粘りのある白米などで、beras pulutと呼ばれる粘りの
ある白米がもっとも高い人気を得ている。モチ米ketanが使われる場合もあることから、
米の種類はお好み次第と考えたほうが良いだろう。
ルマンは特にムラユやミナンカバウで好まれている飯の食べ方だ。ミナンカバウでひとび
とはルンダンやアヤムスルンデンと一緒にルマンを食べている。おやつの場合は黒モチ米
で作ったタぺと一緒に食べる。西スマトラ州トゥビンティンギの町はルマンの町という綽
名を与えられている。

[Nasi Jaha]
ジャハとはミナハサ語でショウガを意味しており、ナシジャハはショウガ飯のことになる。
モチ米と白米を4対1の比率で混ぜ、ココナツミルクやブンブと一緒に竹筒に入れて火に
かける。ブンブはショウガ・赤バワン・パンダン葉・塩・砂糖などであり、特に砂糖が多
いわけでないため、甘いものには属さないように思われる。
このナシジャハはミナハサ人の祝祭料理であり、昔から伝統儀式や宗教儀式の際になくて
ならぬものになっていた。クリスマス・復活祭・教会の記念日などには、必ずテーブルの
上にナシジャハが用意されていた。
今ではマナド市内のパサル・スーパー・レストラン・カフェなどで一年中いつでも買うこ
とができる。ナシジャハも竹筒の中にバナナ葉を敷いてから米を入れて炊くので、できあ
がって皿に盛られたナシジャハはバナナ葉に包まれたものになっている。だが、その形よ
くできあがっている円筒形は竹筒が作ったものであり、竹筒を使わない類似のものとは一
味違っていることを忘れてはなるまい。[ 続く ]