「ルジャッの真実(5)」(2022年09月07日)

非フルーツサラダ系ルジャッに必ずと言ってよいほど登場する豆腐を主役にしたルジャッ
のrujak tahuもある。タフゴレン・モヤシ・キュウリが主素材で、揚げピーナツをそれに
混ぜ、上からサンバルソースをかけるだけの、たいへん手軽にできるものだ。

ソースはニンニク・トウガラシ・ヤシ砂糖・塩(赤バワンを加えることもある)をすり潰
して椀に入れ、少量の湯とケチャップマニスとライム汁を加えて混ぜる。それを皿に盛っ
た素材にかけ、上からバワンゴレンとサラダ菜のみじん切りをふりかけて供する。


南スマトラ州パレンバンのルジャッタフは高い評判を集めている。そりゃそうだ。パレン
バン名物のpempekが追加されるのだから。ペンペッとは魚のすり身を練って焼くか蒸した
食べ物であり、ヌサンタラに知れ渡ったペンペッパレンバンを名前に使わずに隠している
ところが奥ゆかしいではないか。

パレンバン風ルジャッタフの素材は揚げ豆腐・モヤシ・茹でた生麺・索粉を湯で戻したも
の・キュウリ・ペンペッパレンバンが使われる。それにソースがかけられるのだ。ソース
はヤシ砂糖・白砂糖・乾燥小エビを戻したもの・酢・炒めた赤バワン・ニンニク・赤トウ
ガラシ・チャベラウィッをすり合わせて練り、水に溶かして作る。普通のルジャッタフよ
りもはるかに食べ応えのあるものになっている。


フルーツサラダ系ルジャッのひとつにrujak bebegがある。bebegは時にbebekと書かれる
ためにあひるのベベッと混同しがちになるのだが、beubeukとも綴られるという説明が示
しているように、どうやら語源はスンダ語ブブッに由来しているようだ。意味は潰して粉
々あるいはどろどろにすることだそうで、このルジャッは果実の原型をとどめない姿にな
るのが普通だ。

ルジャッブブッをブタウィフードと言うひともいるようだが、その名称からはどうもスン
ダ文化の匂いが強く立ち上ってくる。いや、わたしはそれを正誤判定しようなどと毛の先
ほども考えていない。ブタウィ文化の底辺には地縁としてのスンダ文化が確固として鎮座
しているのだから。

ルジャッブブッはそんな風にして作られるものだから、使われる生鮮果実は硬めのテクス
チャのものが選ばれる。マンゴ・ジャンブ・未熟パパヤ・バンクアン・クドンドン・未熟
パイナップル・キュウリ・熟れ始めのイモ類などだ。さらにjeruk baliと呼ばれているブ
ンタンやピサンバトゥあるいは若いムンクドゥを加えるひともいる。

それらの皮をむいてから細切れにして臼状の容器に入れ、ブンブをそこに加えたあと木製
のスリコギで潰しながら混ぜていく。ブンブはヤシ砂糖・チャベラウィッ・塩・トラシ・
タマリンドの汁など。地方によっては乾燥小エビが加えられることもある。辣味はチャベ
の数でお好み次第に調節する。


万人に好まれるルジャッブブッは味もさることながら、潰しの程度にも関わっている。潰
されて泥状になったものと潰されきらずに原形をなにがしかとどめているものがほどよく
混じっている状態が最高なのである。全部潰して濃縮ジュースにしてしまっては、万人好
みでなくなる恐れがある。巧みなルジャッブブッ作り売り人たちは、あっという間に潰し
作業を終えて万人に好まれるものを作る。

昔の作り売り人たちは小さく切ったバナナ葉を逆円錐状にまるめて、できあがったルジャ
ッをその中に入れ、バナナ葉を折って作った代用スプーンを添えて客に渡した。バナナ葉
が格別の風味をルジャッブブッに添えていた時代だった。今ではプラスチックカップとプ
ラスチックスプーンが現代化した作り売り人たちの常識になっている。

一見、茶色で泥臭く、あたかも漬物かなにかのように見えるこのルジャッは、甘・酸・辣
そして苦みも少し混じっていて、その豊富な味覚のバリエーションがプリブミの心をしっ
かりと捕えているようだ。[ 続く ]