「ルジャッの真実(終)」(2022年09月08日)

バリ島北海岸部最大の町シ~ガラジャSingarajaにもルジャッの郷土料理版がある。この変
わり種が持っている大きな特徴は、ソースに酢とビウバトゥが使われることだ。その名も
rujak cuka biu。ビウとはバリ語でバナナを意味する。

インドネシア語でpisang batuと呼ばれるこのバナナは学名がMusa balbisiana Colla、そ
してpisang kluthukやpisang bijiなどの異名を持っている。皮が硬くて厚みがあり、実
の中にしばしば大きな種ができ、生鮮状態で食べることはまずなされない。しかし完熟す
ると、実は甘く、良い香りを放出する。

まだ若い実がルジャッチ~グルやルジャッブブッのソースに使われることがあるのは、独
特のえぐ味が混じるのを愛好するファンが少なくないからだ。またピサンバトゥは消化器
系への薬効を持っているので、激辣のサンバルソースの刺激を受けた胃腸に回復力をもた
らしてくれると一般に考えられている。医学の未発達な時代にそんな見解が持たれていた
のであれば、薬草学における驚くべき知識の応用と言えなくもないだろう。


このルジャッチュカビウは、果実ルジャッに一般的なマンゴ・パパヤ・バンクアン・パイ
ナップルにイモ類が加えられる。ソースはヤシ砂糖とトウガラシなどにビウバトゥを加え
てすりつぶし、酢でのばしたものだ。愛好者はアシナンボゴールに似たようなものだと評
している。多分アシナンボゴールから野菜類を取り去ったものなのだろう。

酢もワルンによって種々のものが使われているようだが、中に手製の酢を作ってそれをル
ジャッに使うひともいる。アレンヤシの花から得られたニラと呼ばれる液体をひと月ほど
蔵置しておくと酢に変化する。そんな趣のあることをしてくれるワルンの商品はきっと格
別の風味が楽しめるにちがいあるまい。


ルジャッチュカビウのワルンでは、店側が用意してある果実の中から好みのものを選んで
作ってもらうこともできる。客は自分の食べたいものだけを選んで注文し、欲しくないも
のは加えないように頼むことができるのだ。お仕着せの定型メニューをいやでも食べさせ
られるわけではないのである。

このルジャッチュカビウは果実類とソースを別々に冷蔵庫に入れておけば、一日以上、作
った店によっては三日くらい日持ちするそうだ。混ぜてしまったら、できるだけ早く食べ
なければならない。

女性がこれを頻繁に食べていると、使い古した女性器がまるで乙女のようになってくると
語るひともいる。そんなことをいったいどうやって調べたのだろうか??[ 完 ]