「グラリ(2)」(2022年10月20日)

スンバワ島で水牛ミルクを使ったキャラメルを作っている人のルポ記事がコンパス紙の中
にあり、その記事でキャラメルのことをプルメンと書きながら製造工程でのキャラメルの
ことをグラリと書いている記事にもわたしは遭遇している。コンパス紙ですら「おまえも
か、ブルータス!」という印象を感じさせてくれたこの名称の混乱に、わたしはアンドレ
アス・マルヨト氏と同じ困惑を抱いた。

ところが、インドネシア語の婆さん髪アルマニスの解説の中で、砂糖で作られたドウのこ
とをグラリと呼んでいるのが見つかったことで、砂糖菓子名称の混乱の鍵に関する光明を
わたしは感じたのである。飴細工もコットンキャンディも婆さんの髪の毛もキャラメルも、
その材料はすべて砂糖で作られたドウなのである。グラリが意味しているものはそれだっ
たのではあるまいか。その言葉をそれぞれの最終製品の名称として使ったときに混乱が発
生したのだ。なぜなら、飴細工以外はみんな最終製品に別の名前が付けられていたのだか
ら。


昔はもっとたくさんいた飴細工師も、子供たちの菓子が多様化するにつれて人数が減って
行った。やめた者の多くはミアヤムやバソに商売替えした。

まだ商売を続けているサエブさんは、都内カンプンムラユの借家からタンジュンプリオッ
市場へ行って飴細工を作っている。日曜日にはモナスで商売する。日曜日のモナスではた
いへんな売れ行きになるそうだ。この商売はあまり儲からないように見えるけれど、コス
トはほんのわずかで済むために利益率はすばらしく良いとかれは言う。

かれのグラリの材料は粉砂糖と食用色素だけだ。中には材料コストを下げようとして氷砂
糖を加えるひともいるそうだ。いやもっと激しいのはサッカリンを使う連中だろう。

作り方は小鍋に粉砂糖と水少量を入れて熱し、緩いカラメル状になったら平たい器に移し
て色素を混ぜ込む。色別に作ったものを個別に容器に入れておき、造形を行うときに少量
取り出して使う。色別の素材は空気に直接触れないようにして保管すればひと月は持つか
ら、変質のために使えなくなって捨てることはまず起こらない。在庫ロスは限りなくゼロ
に近いと言える。

材料作りに際してかれは一回に粉砂糖2.5キロ、そして赤と緑の二種類の色素を使う。
製品を客に渡す時の包装のために小さいプラスチック袋と輪ゴムが別途必要になる。それ
らの総コストは1万3千ルピア程度で済む。そうして用意した材料が全部売れたら、総収
入は20万ルピア前後になるのだ。かれはその利益でジャカルタでの自分の生活と故郷ガ
ルッに住んでいる妻子の生活を支えてきたのである。


サエブさんは毎朝午前6時にカンプンムラユの借家を出てタンジュンプリオッ市場に行き、
夕方5時に店じまいをして帰宅する。日曜日には都心のモナス広場で商売をする。モナス
では時に、ほんの数時間で材料が売り切れになることも起こる。午前10時ごろに店じま
いして帰宅することも時々起こるのである。

グラリを買う客はたいていが小学生くらいの子供たちだが、何人もの若者が昔を懐かしが
ってか、買いに来ることもある。飴細工師の指が作り出す造形の妙がかれらの心を刺激し、
慰めを与えるのだろう。「客が何を作ってくれと言おうが、わたしゃ必ずそれを作る。断
ったことは一度もない。テレタビーズだってハートだって、なんでも作りますよ。」サエ
ブさんはそう言って胸を張る。[ 続く ]