「グラリ(3)」(2022年10月21日)

時には、モールが企画する催しに招かれて、そこで商売することもある。昔は普通にどこ
にでもいたのに今や姿の見えなくなった路上の食べ物作り売り職人を集めてモールが企画
した催事で、かれはkue rangi, kue cubit, kue pancongなどの作り売り人たちと一緒に
店を張った。その催事はひと月間ほど続けられ、作り売り職人たちはバティックのユニフ
ォームを与えられて毎日商売した。道端では一個5百ルピアのグラリだったが、モール内
では一個2千5百ルピアの値が付けられた。サエブさんはその間毎日、10万ルピアを超
える収入を得た。

あるいは個人や組織が催す誕生会やパーティなどの催事に招かれることもある。町中でグ
ラリが希少なものになればなるほど、そのような催事主催者が珍しいものを用意しようと
して、生き残って活動している者を招くようになるからだ。

ミアヤムやバソなど他の商品に商売替えしないのかという質問に対してサエブさんは、商
売の経済規模は小さくても、利益率の高さに自分は十分に満足していると答えた。いつま
でもこの商売を続けていきたいとかれは語った。


カラメルでゴマや破砕ピーナツなどをつないだキャンディもある。インドネシアでこの種
類のものはenting-entingあるいはting-tingまたはteng-tengと呼ばれている。多分、オ
リジナルはンティンンティンであり、短縮されてティンティンになり、訛ってテンテンに
なったのではあるまいか。もしも言葉の由来がジャワ語であるなら、entingは総ざらえと
いう意味らしいから何となく雰囲気が合っているようにも思える。しかし語源がジャワ語
であるかどうかははっきりしない。

この菓子を砂糖菓子に分類すると首をかしげるひとが出るかもしれない。だがアンドレア
ス・マルヨト氏の「プルメン」を読むと、ティンティンは砂糖菓子に分類されているよう
だ。もちろんカラメルでなくてハチミツでゴマやピーナツをつないだものもあるので、首
かしげ派のひとは「わが意を得たり」ということになるだろう。

この菓子はギリシャ〜キプロスから中東〜インド〜東南アジア〜東アジアで一般的伝統的
なものだそうで、どうやらゴマをハチミツで固めたものが発端だったように思われる。ピ
ーナツで作られるようになるのはスペイン人ポルトガル人が新世界からピーナツを旧世界
に持ち帰って以降のことだろうから、ティンティンカチャンはゴマよりずっと新しいもの
なのではあるまいか。


ムルバブ山の麓にある中部ジャワ州サラティガの町の特産土産物の中にEnting?Enting 
Gepukがある。このピーナツキャンディの生産者はたくさんいて、少なくとも5つのブラ
ンドがシェアを競っている。そのうちの最大手が Cap "Klenteng dan 2 Hoolo"だ。イン
ドネシア語のチャップとはXX印の「印」を意味しており、つまりブランドを表している。

グプッとは何のことなのか?正式ジャワ語はgebugらしい。グブッというのは棍棒もしく
は棍棒で殴ることを意味している。サラティガのピーナツキャンディはサウォの木で作っ
た太い棍棒でピーナツを叩きつぶして破砕するのである。棍棒が製造工程の中で使われて
いるのだ。

ちなみに、インドネシア語にはgebukと綴る単語がある。これは重く大きい物で殴ること
を意味していて、ジャワ語のgebugが語源であることを感じさせてくれる。街頭リンチの
報道記事にはたいていこのグブッという言葉が登場する。[ 続く ]