「甘くて苦いジャワ砂糖(6)」(2022年11月03日)

「作業期が終わったばかりだから、今日は静かですよ。作業期最終日前だったらこの辺り
はパサルみたいに人でいっぱいになります。サトウキビを納めた農民や砂糖流通業者がデ
リバリーオーダーの手続きに集まってたいへんな賑わいです。」工場従業員のひとりがそ
う説明してくれた。

作業期は15日間を1ラウンドとして毎月15日と30日に終わる。今年の第7作業期は
昨日終わったばかりだ。今年のタシッマドゥ製糖工場の作業期は6月初に始まったそうで、
10月半ばまで三ヵ月半続く予定になっている。

昨日サトウキビ破砕機で故障が起こったために、今は4人の技術者がかかりきりで修理し
ている。機械が故障するのは普通のことだそうだ。なにしろ老朽化しているのだから。そ
れをうまく手なずけながら使いこなしている。工場管理官は機械のメンテナンス費用に年
間40〜50億ルピアを支出していると語った。「たくさんある機械のどれかで故障が起
こるのは毎度のことだが、それでも求められている生産量と効率は達成できている。」

投入されたサトウキビの量と生産された砂糖の量の比率をレンデメンと言う。レンデメン
の指示数値はクリアーされているそうだ。製糖工程に使われているすべての機械は192
6年と1987年に総整備が行われた。新式機械設備への入れ替えではない。

インドネシア共和国がオランダ資産の接収を行った1957年ごろまでタシッマドゥで働
いていたオランダ人技術者が工場見学に訪れたことがある。こんな古い機械がよくまだ動
いているものだ、とかれらは感心していた。そのころ作られていた砂糖にオランダ人は特
別の名称を与えていた。Super Hoofd Suiker - Tasik Madu略称SHS‐TMがそれだ。
結晶の白さが各段に優れていて、ソフトなのである。飲食品製造産業が競ってこの砂糖を
購入していた。

その黄金時代には、3ヵ月間の作業期に460万クインタルのサトウキビが投入されてい
た。昨今では投入量が300万クインタルに減少し、25万クインタルの砂糖が生産され
ている。レンデメンはまあまあの高さだ。


タシッマドゥ製糖工場は国営の第9ヌサンタラ農園会社傘下で今も稼働している8製糖工
場の中のひとつだ。1997年に5工場が閉鎖され、第9ヌサンタラ農園会社は経営の帳
尻を合わせるためにその資産売却を利用している。

老朽化して生産性の上がらない機械設備で作られる砂糖のコストは、諸外国から輸入され
る砂糖の価格に太刀打ちできない。タシッマドゥ製糖工場が成り立っているのは資産売却
のおかげなのだそうだ。

この工場の正社員は746人いるが、製糖事業に関与している人間は7〜8千人にのぼる。
工場所有のサトウキビ農園はカランアニャル県、スコハルジョ県、ボヨラリ県、スラゲン
県、サラティガ県、グロボガン県にひとつずつ、計6カ所ある。総面積は5,771Haあ
るが、面積が縮小傾向にあることは否定できない。その農園でサトウキビを植え付けて収
穫する労働力が7〜8千人いるのである。収穫期にはそれでも手が足りなくなって、プカ
ロガン、バニュマス、クンダルから臨時で人数を集めている。

もしも工場閉鎖にでもなれば、3万2千人がその影響を受ける。そればかりか、8千世帯
の消費生活に関わっていた食事ワルンやパサル・商店なども二次的影響をこうむるだろう。
[ 続く ]