「北の黄色い小人(2)」(2022年12月23日)

征服・占領・支配を行って隷属させた土地と住民を使って得られるものを手に入れるので
ある。スパイスの産地ではそれがスパイスになるだろうし、コショウの産地では、木材の
産地では、布や軽工業の産地では、それぞれ違ったものが得られて会社の富を増やすので
ある。

そのクーンの構想をジャワの民衆はずっと昔から予言として知っていた。クーンは驚くと
共に、自分の船に順風を得た思いがしたにちがいあるまい。自分がこれからすることは、
その予言の実現なのだ。これは必ず成功するはずだ。自分たちがそうなっていくことをジ
ャワ人自身が予言しているのだから。

クーンが考えていた土地と住民の支配はジャワにあった予言と一致していたが、この予言
に付随しているはずの黄色い小人の話はそのときクーンの耳に入ったのだろうか?たとえ
かれが白人支配の結末を耳にしたとしても、そんなことを本社重役会に知らせる必要はな
いと判断した可能性が高いようにわたしには思われる。クーン自身の性格からしても容易
に推察できることだし、そんなネガティブな印象を与える話を重役会に知らせたところで、
クーン反対派の重役が政争の道具に利用するだけだろう。自分の構想に水をかけるかもし
れない要素は報告しないでおくに限る。


要するにクーンは重役会に対して、東インドの土地と住民に対する統治支配を会社が行う
ことをアピールした。最終的にVOC重役会はそれに賛同してクーンが本拠地をアンボン
からバタヴィアに移すことを承認した。

われわれオランダ人がその予言の白い異民族なのであり、この構想は原住民がすでに予想
していたものなのだ。VOCはそれを現実のものにするだけだ。隷属させられる原住民は
自らの運命を予言の形で知っていたのだから、この構想の成功は疑いない。クーンはジョ
ヨボヨの予言をも最大の効果を狙って利用したはずだ。


今インターネットを探ると、ジャワ島をめぐる白人と黄人についての予言の文句は次のよ
うに表現されている。
*白人を追い払うために黄人がジャワにやってくる。
*黄色い小人が白人の非道な支配からジャワを解放するためにやってくる。
*黄色い人間が白い人間の非道からインドネシアを解放するためにやってくる時期がある。
*白人の男たちがやってきてジャワを長期間占領する。北から黄人がやってきて白人の支
配を終わらせる。黄人はジャグンが生育するくらいの期間だけジャワを占領する。
*北から黄色いひとびとがやってくる。身体は大きくないが小人というほどでもない。黄
色いひとびとはジャワの地を占領するが、それはジャグンの生育するくらいの期間だ。
*ジャワ島は白人に支配されてから、肌がジャグンのように黄色く、小さい細目の小人が
やってくる。黄色い小人の支配は長くない。その肌の色のようなジャグンの生育する期間
だけだ。
*人間を離れた場所から殺せる杖を持った蒼白い肌の者がやってくる。そのあと、黄色い
肌の者がやってくる。かれらはこの地を支配しようとする。そのために多くの生命と財産
が失われる。
*semut ireng anak-anak sapi(牛の子供の黒いアリ)
黒いアリに例えられる勤勉な白人がやってきて、ヌサンタラの富を収奪し、牛に例えられ
た本国を富ませる。牛と言われると、われわれはポルトガルよりもオランダのイメージを
より強く感じるだろう。
*kejajah saumur jagung karo wong cebol kepalang
身体の小さい小人によってジャグンの生育するほどの短期間だけ支配される
[ 続く ]