「餅(16)」(2023年01月31日)

もうひとつ、本論における団子の概念に近いと思われるスンダやブタウィのローカル菓子、
gomblongを挙げることができるだろう。サイズや形はむしろ「もち」を連想させるかもし
れないが、仕上げが油でフライにされる点に大きなちがいがあって、それが「もち」との
連想を断ち切るおそれが高い。ゴンブロンはこのようにして作られる。
1.ココナツミルクを熱してからモチ米粉を混ぜ入れ、十分溶け合ったところでカンジ粉
・ヤシの果肉フレーク・マーガリン・塩を加える。
2.1のドウをコロッケ型または球形に成形して油で揚げる。
3.グラメラと白砂糖を混ぜて熱し、液状にする。
4.3の中にゴンブロンを入れて全体にからませ、取り出して乾かす。
もちろん、深皿にグラメラの蜜を入れ、ゴンブロンを中に入れてからませてから、皿ごと
供しても魅力的だ。これがゴンブロンという食べ物なのである。

このゴンブロンは白モチ米粉が使われるのが一般的であり、黒モチ米粉が使われたものは
getasと呼ばれている。言うまでもなく、これも現代インドネシアにおいては至るところ
で作られて販売されており、どの種族で起こったものという定説はない。おまけによく似
た食べ物が他にあるわけでもなく、何に由来したのか、どこからヒントを得たのか、由緒
来歴は闇の中にある。ゴンブロンという名称自体も意味がよく分かっておらず、コロッケ
様の形を表現するのに使われたオノマトペがその名前になったという説もある。


インドネシアには他にもモチ米で作られるさまざまな食べ物がある。

lemper
ルンプルは日本の海苔巻きのような姿をしている。ただし外を巻いているのはバナナ葉だ
から、食べることができない。炊いたモチ米を巻き型に置き、中央に調理された鶏肉細切
れや牛肉のでんぶを載せてから丸め、それをバナナ葉で円筒形に包み、もう一度蒸す。蒸
す代わりに焼くと、また違う風味のものができる。最初にモチ米をココナツミルクで炊い
ておくと旨さが増す。蒸したものはたいてい円筒を好みの長さに切り分ける。焼いたもの
は通常、皮付きのまま丸ごと供されるから、大きさを調節しておくべきだ。

ルンプルの姉妹版にarem-aremがある。わたしがバリ島でよく食べているアルマルムはモ
チ米を使わず、鶏肉細切れと野菜を調理したものを芯にして白米で包んだ円筒形をしてい
て、その外側がバナナ葉で包まれている。芯と言っても、全長の半分くらいしか入ってお
らず、残り半分は握り飯を食べているようなものだ。その芯の中に大きめのトウガラシが
必ず一個丸ごと入っていて、うっかりそれを丸ごと噛み込んだときには数秒間、口が動か
なくなった。

ルンプルのバリエーションの中には、小麦粉・ブンブ・卵でクレープ風の皮を作り、バナ
ナ葉の代わりにそれで本体を包んでから油で炒める、スマル・ムンドゥムというものもあ
る。

lepet
ルプッはルンプルに似ているがかなり趣が異なっている。これはモチ米を半蒸しにしてか
らココナツミルク・パンダン葉・塩を加えて蒸し上げ、それにピーナツ粒とヤシの果肉フ
レークを加えて、ちょっと小ぶりの円筒形にしてからヤシの葉でがんじがらめに縛りあげ
たものだ。最終的に、ヤシの葉にくるまれたものをもう一度蒸して仕上げる。

できあがったルプッに含まれているのはモチ米粒とピーナツ粒だけということになる。ピ
ーナツに替えて金時豆・トロ豆・コロ豆・トウモロコシ粒を使うものもある。

スンダ語でleupeutと表記されるスンダ地方のルプッはジャワのものより小型であり、タ
フスムダンの相方として食べられることが多い。スマトラへ行くとlepatとlepetというよ
く似た名称の食べ物があって、それらはどちらも中に餡が入っている。ルパッは中にグラ
メラとヤシの果肉フレークが餡として包まれていて、外側がバナナ葉で包装されている。
一方スマトラのルプッにはピーナツ餡が使われ、外側はヤシの葉で包まれている。
[ 続く ]