「餅(17)」(2023年02月01日)

wajik ketan
食べ物の正式名称はkue wajikと言う。ワジッとはひし形あるいは平行四辺形を意味する
言葉であり、ジャワ島中部地方では通常その形で作られるためにワジッという名称が付け
られた。スマトラではpulut manisと呼ばれている。

たいていモチ米が使われるのでワジックタンと呼ぶひとが多い。モチ米を蒸してからココ
ナツミルクとグラメラを混ぜ、容器から取り出して米粒がびっしりと詰まっている塊をひ
し形あるいは長方形を押しつぶしたような平行四辺形に切り分ける。売られているものは
たいていがその形だ。そのようにせず、日本のもちのように手で丸めることもあるが、こ
れは自宅で作って食べるときにふさわしい形のように思われる。

ワジックタンは普通グラメラの色になるのだが、中には緑色やピンク色のものもある。緑
色はスジ葉、ピンク色は合成着色料が使われる。調理時にパンダン葉が混ぜられるので、
香りがあるのが普通だ。

krasikan
ジャワ島中部地方のローカル菓子にクラシカンというものがある。中部ジャワ州プルウォ
レジョが発祥だそうだが、ジョグジャをはじめあちこちに地元版のバリエーションがある。
この菓子はドドルに似ているとはいえ、ドドルよりも肌理が粗い。ジャワ人はたいていド
ドルをjenangと呼ぶ。ジュナンの本来の意味はbuburだ。この菓子はドドルに似ているた
めにジュナンクラシカンと呼ぶ人も少なくない。

最初プルウォレジョに出現したとき、これは祝宴の中での軽い菓子として扱われた。祝祭
の届け物にも、飯とおかずにクラシカンが添えられるようになった。今では中部ジャワと
ヨグヤカルタを代表する土産物のひとつとして、観光客に人気のある商品になっている。
作り方は下の通り。
1.モチ米を洗って水を切る。
2.それを茶色になるまで炒り、冷ましてから半搗きにする。
3.ヤシの果肉フレークを炒って粉末にする。
4.鍋にグラメラ・塩・ココナツミルクを入れて沸騰させ、溶かし合わせる。
5.4を一度濾してからもう一度火にかけ、炒ったモチ米とヤシ果肉の粉末を少しずつ入
れて混ぜながら加熱し、水分を無くす。
6.5を容器あるいは型に入れて冷まし、冷めたら取り出して適当なサイズに切り、皿に
盛って供する。

カリマンタンのポンティアナッにも類似のものがあって、それはcingkarokと呼ばれてい
る。作り方はクラシカンとほぼ同様で、ポンティアナッではルバランのための必需品のひ
とつに位置付けられている。

ledre
中部ジャワにレドレという菓子がある。中部ジャワのいくつかの町でご当地特産品になっ
ているが、ソロのものとボジョヌゴロやガウィのものは見た目からして異なっており、わ
れわれを当惑させてくれる。ソロのものは違いを明白にするためにledre pisangと呼ばれ
るらしい。ソロのレドレはモチ米のドウとバナナを合わせて焼いたものだ。

まずモチ米粉とヤシの果肉フレークを混ぜてドウを作る。モチ米を蒸してから潰してドウ
にするともっと美味しい。次によく熟れたバナナの実を、適量の塩を加えながら潰してド
ウにする。バナナは熟れすぎない程度によく熟れているほうが、良い結果が得られる。
まず中華鍋にモチ米のドウを卵焼きのように薄く円形に置き、その上にバナナのドウを置
いて、弱火で熱する。鍋には油を敷かない。

モチ米のドウに火がよく通るよう上から押さえつけながら焼く。焦げ飯のような茶色にな
ったら半分に折ってバナナを中に包み込む。それで出来上がり。これは温かいうちに食べ
るのがおいしいそうだが、たいていは作った場所からパサルに持ってきて販売されている
から、作り売りをしている店を探さねばなるまい。[ 続く ]