「餅(22)」(2023年02月08日)

販売用に作っているところももちろんあって、黒モチ米と白モチ米をそれぞれタペにして
販売している。西ジャワのクニガンやパガンダランでは、タペクタンを一口大の立方形に
してジャンブアイルやワルの木の葉で包んだものを生産している。椀に入ったタペをスプ
ーンで食べるよりも野趣があり、木の葉の香りが移っているので、一部のひとに人気があ
る商品だ。

タペクタンの作り方は、蒸したモチ米に酵母菌を加え、空気に触れないようバナナ葉など
の大きい滑らかな葉で包み、25〜30℃で2〜4日くらい発酵させる。周囲に水がたま
るようになったら食べごろなのだそうだ。


さて本論の最後の締めくくりとして、日本の「搗きもち」とそっくりなものがインドネシ
アにもあることをご紹介しようと思う。

スンダやブタウィで日常よく供されているものに小判状や円板状のもちとタペクタンを一
緒にして食べるtape uliというものがある。この食べ物ではもちがウリと呼ばれている。
ウリの作り方はこうだ。
1.白モチ米をよく洗って一晩水に浸けて置く。
2.20分間蒸してから容器に移し、ヤシの果肉フレークと塩を混ぜて均一にしてから再
び蒸して蒸し上げる。
3.蒸し終わったら米粒を全部潰してジェリー状にし、成形型に入れるか、そのまま手で
丸める。
4.成形型に入れて冷ましたものを取り出して、立方体に切り分ける。

このウリと黒モチ米のタペを合わせて食べるのがタペウリの食べ方だ。
白いままのウリを肉のおかずと一緒に食べることもするが、ウリを揚げたり焼いたりして
から肉のおかずと合わせることもするし、あるいは甘いものに添えて食べることもある。


このウリがジャワ文化ではjadahと呼ばれている。ジャダは白モチ米を蒸してジェリー状
にしたもので、やはり油が混ぜ込まれるのであまり早く乾燥して硬化することはないよう
だ。ジャダは昔からジャワ文化の中で行われる種々の祝祭行事に特別に供される食べ物と
して作られてきた。

婚姻申し込み、結婚式、赤児の七か月目の祝等々に供されるもののひとつとされてきたの
だが、段々とお目にかからなくなってきているというジャワ人の話だ。作り方に手のかか
る工程があるので、どの家でも簡単に作れるというものではないように思われる。それが
現代ジャワ人にジャダを作ることにためらいをもたらしている原因かもしれない。ジャワ
のジャダも日本の搗きもちと似たような運命を歩んでいるのではあるまいか。

ジャダの作り方はこのようになっている。
1.白モチ米(粒米)を洗って一晩水に浸ける。
2.それを半蒸しにする。
3.水を足してふやかせる。
4.再度蒸して、蒸し上げる。
5.蒸されたモチ米とヤシの果肉フレーク・塩を均一に混ぜる。
6.臼状の深い容器にバナナ葉を敷き、5を入れて上から押し、粒を粗く潰す。
7.6を更にビニール袋に入れ、すり石の棒で潰して、粒のないジェル状にする。
8.7をバナナ葉で包み、適当な大きさに切る。
蒸すときにサラム葉やパンダン葉を加えて香りを付けることが多い、蒸しあがったら葉は
捨てる。[ 続く ]