「餅(終)」(2023年02月09日)

日本の丸餅をちょっと長くしたような形あるいは団子型やコロッケ型に成形し、おかずと
一緒に皿に置いて供するのがジャダの普通の食べ方らしい。ジャダはテンペバチュムと一
緒に食べるのがサイコーだとスルタンハムンクブウォノ9世ものたまわっている。


ヨグヤカルタ州スレマン県カリウラン地区へ行くと、ジャダテンペを供してくれる食事ワ
ルンがたくさんあって、探すのに困らないそうだ。ジャダとジョグジャのテンペバチュム
の組合せは1950年代ごろから人気のある食べ物になった。食感と味覚のコントラスト
が際立っていて、その両者を一口分重ねて同時に口中に入れて味えば食の極味に至るとジ
ョグジャのひとびとは語る。

中部ジャワ州ボヨラリ県セロ郡もジャダの名所だ。こちらの食事ワルンにもジャダテンペ
や鶏肉炒めを添えたものがもちろんあるが、ジャダの他の食べ方として四角く切ったジャ
ダを火であぶり、それにブンブを加えたヤシの果肉フレークを振りかけて食べるおやつ風
のものもある。

セロ郡にある食事ワルンのひとつで、店主はコンパス紙記者に作り方のむつかしさをアピ
ールした。モチ米は洗って3時間水に浸し、ヤシの果肉と塩を混ぜてから2時間以上蒸す。
それから潰して肌理を出していくのだが、肌理の素晴らしいものを作るにはたいへんな熟
練が必要なのだそうだ。このワルンは1940年代から商売を始めた。

この店は昼食時に大勢の客で賑わう。客はジャダとおかずでの食事を摂りにやって来るの
だ。そして夕方16〜17時ごろになると、店の中がまた客で混みあう。ジャダにブンブ
たっぷりのスルンデンをかけ、コーヒーの友にして夕食前のすき腹をなだめるためだ。

このように、「もち」によく似た食べ物がインドネシアにあるにもかかわらず、インドネ
シア人がモチと呼ぶ食べ物は「もち」と異なるものであり、「もち」にそっくりなものを
だれひとりモチと呼んでくれない。[ 完 ]