「陸軍点描(5)」(2023年02月13日)

陸軍の兵器工廠となったパバルは1962年ピンダッに改称された。そしてピンダッ製銃
火器類に対する種々のテストが実施されて、いくつかの製品が最終的に陸軍正式兵器に採
用された。

1972年、陸軍はこの軍事産業部門を軍内の一部隊として扱うことにし、Komandoの名
称を冠したので、組織名称はKopindadとなった。その形態は1976年まで続き、その後
また旧態勢に戻されている。

その後1980年代になって、国を代表するこの軍事工場が陸軍の管下にあるのはより自
然な発展の機会を狭めるものになりかねないという議論が起こり、政府は国有の株式会社
にすることを決めて1983年に会社の形態を変更させた。

ピンダッの製品ラインナップは次の通り。
突撃銃、歩兵銃、機関銃、拳銃、短機関銃、散弾銃、狙撃銃、
グレネードランチャー、迫撃砲
兵員輸送軽車両、兵員輸送中車両、放水車、火力支援車両、戦車
水上機器、農機、建設機械
などとなっている。


国軍カヴァルリの戦車部隊には、ユニークな不文律がある。部隊内で鼻ひげをたくわえる
のは少佐以上の階級に限られているのだ。少佐以上が全員鼻ひげをたくわえているわけで
もないが、鼻ひげをたくわえているのは決まって少佐以上の階級になっている。少佐に昇
級した者はたいてい、その喜びで鼻ひげをたくわえるという話だ。

大尉以下の者が鼻ひげをしても、何も規則違反に該当しないから、誰にもそれをとやかく
言うことはできない。ところが、外部から移って来た鼻ひげをしている大尉以下の者は、
みんないつの間にか鼻ひげをそってしまっている。部隊から軍管区司令部など外部機構に
勤務を命じられた者の中には、その間鼻ひげをたくわえる者もいる。そしてその勤務期間
が満了して部隊に戻って来ると、また鼻ひげをそり落して出勤してくるのだそうだ。

戦車部隊員はみんな黒色ベレー帽をかぶっている。世界中がそうしているという話であり、
インドネシアでもそれに倣った。どうして黒色が選ばれたのか?戦車の機械油で汚れるか
ら最初から黒にしておけば目立たない、というのがその理由だったのではないかな、と戦
車兵たちは語っている。

一方騎兵部隊についても、カヴァルリが公式編成されたときに部隊編成が行われた。独立
を維持するための戦闘行動の中で馬は適宜使われていたのだが、馬を扱う特別の部隊が作
られらことはなく、国軍内の一部隊として発足したのがそのときだった。そのとき戦車と
は別に、オランダ側は20頭の戦闘馬を国軍に寄贈した。その後国軍は1957年にオー
ストラリアから178頭、1967年にはパキスタンから80頭というように適宜購入を
行って騎兵部隊の維持に努めている。

現在は236頭を擁する騎兵カヴァルリ支隊として、パトロール活動を主要任務にしてい
るが、共和国の動乱の歴史の中で過去に起こったさまざまな国内叛乱に出動した戦歴を持
っている。西ジャワのダルルイスラム/インドネシアイスラム軍蜂起、G30S鎮圧戦、
東ティモール制圧戦などだ。ただし236頭は予備の馬を含めた数であり、公式部隊編成
は120頭になっている。その236頭の種別はスペイン・カザフスタン・オーストラリ
ア、そして国産スンバワ種などで構成されている。
スンバワ馬については拙著「ヌサンタラの馬」がご参照いただけます。
http://omdoyok.web.fc2.com/Kawan/Kawan-NishiShourou/Kawan-68KudaNusantara.pdf
[ 続く ]