「ヌサンタラのドゥリアン(11)」(2023年03月15日)

サルノはまず果肉がオレンジ色のモントン種を原樹にしてそれにペトルッ・クニンマス・
クンバカルナなど優良種10種類を接ぎ木した。4カ月ほどして接ぎ木がしっかり繋がっ
たのを確認してから、今度は接いだ木にスナン・オトン・クレンなど別の中級種10種類
を接ぎ木した。するとなんと、原樹の根がマングローブのように地上で分岐したのである。
サルノは語る。「根が分岐したのは、一次接木が自分の果実に十分な栄養を与えようとし
て原樹の養分を奪うために、原樹がよりたくさんの養分を必要とするようになったからだ
ろう。二次接木は一次接木が生む果実の品質に影響を与える。」

そのお化けのような樹を作ってから4年経った2000年に、この樹は40個ほどのモン
トン種の果実をつけた。しかしその果実は元のオレンジ色ドリアンモントンとは異なるも
のになっていた。果実はクンバカルナのような大型で、1個で10キロを超えるものさえ
できた。皮が薄く、果肉は厚く、果肉の色はもっと濃いクニンマスのような紅色で、味覚
はこってりしており、アルコール度はペトルッに似ていた。

サルノが生み出したこのドリアンにかれはbhineka baworという名前を付けた。ビネカは
国是のビンネカトゥンガルイカ、バウォルはバニュマスのワヤンキャラクターの名前を取
った。バウォルは何事もあけすけに、そのものズバリの発言をするキャラクターなのだ。


ビネカバウォルにもファンが着いた。バニュマスの町やジャカルタから果実の注文が入る。
またジャワ島内ばかりか、スマトラやスラウェシから苗の注文も入って来る。サルノのサ
イドジョブは順調に進展している。

言うまでもなく、サルノも地元一円の農家にこの種を栽培するよう働きかけた。その経済
性はサルノ自身が実践して見せているのだ。おまけにサルノは二次接木に表土保持能力の
高い種類を選択していた。ビネカバウォルは表土流出をいくらかなりとも減少させること
ができるだろう。ドリアンの樹は低地よりも高台を好む。高台には表土流出の可能性が常
にある。これは一石二鳥のドリアンになるにちがいあるまい。

ドリアンの果実はシーズン性がある。ドリアンの経済性を高める上で、それが大きい障害
になっている。このシーズン性という悪条件をどのように克服するか、サルノが挑戦して
いる次のテーマがそれだ。樹にどのような肥料をいつ与えるか。それによって9月10月
に結実する果実が得られないか。サルノの研究はとどまるところを知らない。


ドリアンの宝庫、カリマンタンに果肉の赤いドリアンがある。その中のlaiあるいはlayと
書かれることもあるこの種を、ちょっと訛って発音頭に母音が添えられたelaiと呼ぶ地方
もある。東カリマンタンがライの原産地として知れらている。サマリンダではleiとも呼
ばれているようだ。

果肉の色は全面的に赤色だったり、グラデーションを帯びて虹色になっていたりする。ド
リアン臭はきつくない。種が小さくて果肉が厚く、肉はベタベタ付かないでサラッとして
いる。食感は普通のドリアンが持っているクリーム風のものでなく、プリンのような固形
感触を感じるのが普通だ。

実は、このライは普通のドリアンと異なるDurio kutejensisという別種で、クタイカルタ
ヌガラ地方が原産地と言われている。クタイの地元民が通常エライと呼ぶこの種にもバリ
エーションがあり、elai batuahやelai kutaiが特に人気の高い種類だそうだ。

このエライを白果肉ドリアンと交配させたものがelai mahakamであり、エライの色をその
まま保ちながら果肉はクリーム状の食感が濃くなっているためにファンが多い。

シーズンになると、バリッパパン〜サマリンダ街道の道路脇にエライの山を築いて販売者
が客待ちをしている。何と驚くことに、そこではあり余るエライの値段がジャワで普通に
見られる白ドリアンの半額程度で売られているのである。赤ドリアンが希少な地方では信
じられないような話だが、ところ変われば常識も違ってくるのだろう。道路脇の販売者た
ちはそれぞれがたいてい一日100〜150個くらいを販売しているようだ。[ 続く ]