「ヌサンタラのドゥリアン(17)」(2023年03月27日)

dadar gulung durian
これも小麦粉の皮でドリアンの餡を円筒形に包んだものだが、パンケーキドリアンとは包
み方が異なる。まずヤシの果肉フレークと塩砂糖・水・パンダン葉を、油を敷いた鍋に入
れて熱する。そこにドリアンの果肉を加え、水気がなくなるまで加熱して餡を作る。

皮は小麦粉と塩にココナツミルクと卵を加えて均一に混ぜ、加熱して沸騰させる。平らな
小鍋に油を敷いて一枚一枚皮を焼く。冷めた皮を広げて餡を置き、円筒形に丸めて両端を
折り曲げる。これは室温で供する。

es krim durian
完熟前の果肉とココナツミルク、タピオカ粉、砂糖、塩を合わせて混ぜ、アイスクリーム
にする。次に、熟したドリアンの果肉をブレンダーにかけてクリームにする。グラスにク
リームを入れ、その上にアイスクリームを置き、更にクリームをもう一度上に載せて供す
るのがエスクリームドリアンだ。わたしにはこの三つの名詞がどんな関係になっているの
かよく分からない。

es cendol durian
kacang hijauの粉であるhunkwe(粉[米+果])を練って成形した長粒状のものがチェンド
ルだ。それを冷たいココナツミルクとグラメラの汁にたっぷり入れて食べるのがエスチェ
ンドルというおやつである。

ココナツミルクの汁はココナツミルクとパンダン葉みじん切りに少量の塩を加えて沸騰さ
せる。グラメラの汁はグラメラと粉砂糖、パンダン葉みじん切りに少量の塩を加えて熱す
る。

チェンドルの作り方はまず、鍋の中でフンクウェに砂糖を混ぜ、水を加えてからパンダン
葉とスジ葉を浸した水を加えて均一にする。鍋を弱火で加熱し、ドウに透明感が出て滑ら
かになったら火を止める。

容器を水で満たし、氷を入れる。チェンドル型にまだ熱いドウを入れてドウを押し出すと、
切れたドウが氷水の中に落ちて冷え固まる。だからチェンドルは両端がちぎれて円錐状に
なった円筒形をしている。

鉢状の容器にチェンドルをたくさん入れて上からココナツミルクとグラメラの汁をたっぷ
りかける。その上にドリアンを載せると、エスチェンドルドリアンの完成だ。

serabi/surabi durian
スラビというのは一種のパンケーキであり、西洋風のものより小さく分厚い。serabiある
いはsurabiと二様に綴られ発音されているのは、元来がスンダ語のsuraに由来していたか
らだそうだ。suraは偉大な人物事物を形容する言葉だ。しかしそれはジャワ語でも同じよ
うな気がするのだが。

この菓子は特にジャワ島で人気が高く、古い昔から作られてきたと言われている。遠い昔、
スラビはまだ暗い時間にパサルで作り売りされていた。夜明け前のパサルに集まるひとび
との空きっ腹をなだめるために始まったのがその由来だそうだ。作り売り人はなぜか婆さ
んばかりだったという話で、クエスラビと婆さんが組み合わさってステレオタイプになっ
た。2000年代に入ってクエスラビのイメージチェンジが起きるまで、スラビは婆さん
の「お焼き」というイメージがヌサンタラ中に流布していた。

スラビにはスラビバンドンとスラビソロというふたつのご本山が有名だが、ミナンカバウ
やメダン、あるいはブタウィ・チルボン・トゥガルなどでも独自の工夫が凝らされていて
人気がある。メダンでスラビミナンと呼ばれているものは、果実と砂糖を混ぜたソースを
付けて食べる。ドリアンシーズンになるとその果実がドリアンになるという寸法だ。

スラビバンドンとスラビソロはタイプが異なっている。スラビバンドンは小麦粉を使う一
方、スラビソロは米粉を使う。スラビバンドンは食べるときにスラビとキンチャあるいは
他のトッピングを皿の上で併せるが、スラビソロはソースをドウに混ぜて作ってしまうか
ら、食べる作法の簡便さに大きい違いがある。[ 続く ]