「ヌサンタラのドゥリアン(19)」(2023年03月29日)

bolu gulung durian
ボルというのは小麦粉・鶏卵・砂糖などを混ぜて焼いたケーキのことで、ポルトガル語の
boloか、あるいはオランダ語のbolusに由来しているようだ。英語ではsponge cakeと呼ば
れている。焼く代わりに蒸す方法で調理されるものもあり、インドネシアでは蒸したスポ
ンジケーキがbolu kukusと呼ばれている。

ボルグルンというのは、薄く焼いたボルの片面にクリームやジャムや餡などを置いてぐる
ぐると巻いたものだ。つまりロールケーキのことなのである。ボルに巻き込むドリアンク
リームの作り方はこうなっている。

粉末ゼラチンを水に溶かして加熱してから室温に冷ます。ホイップクリームを固く泡立て、
ドリアンの果肉を加えて均一にする。そこにゼラチン溶液を加えてよく混ぜる。

焼いてから冷ましておいたスポンジケーキにドリアンクリームを載せ、丸めて落ち着かせ
てから一定の幅に切る。

talam durian
クエタラムという蒸し菓子はプリンのようなテクスチャーをしているが、プリンよりずっ
と弾力性のある層が積み重ねられた形態をしている。ブタウィ原産の菓子だそうで、5百
年超の歴史を持っており、昔この菓子は蒸すときに脚のない円形のタラムと呼ばれる型が
使われたために、そう名付けられたと説明されている。ちなみにブタウィ語辞典によれば、
talamはbakiあるいはnampanを意味している。

植民地時代にクエタラムは貴族階層の食事の前菜として食された。高貴なひとびとの会食
にそれが供されたのは大切な客への敬意を示すのにふさわしいという印象がそこに付着し
ていたためだろう。そんな豪華な食べ物として供されるときは普通、5層の積み重ねにな
っていた。

ドウには米粉・タピオカ粉・コーンスターチ・グラメラ・ココナツミルク・塩とパンダン
葉が使われる。そのドウで四つの層を作り、最後にコーンスターチとココナツミルクを加
熱したものを第五の層にするのである。

タラムドリアンは普通、二層になっていて、通常のクエタラムとは見かけからしてだいぶ
違っている。下の層は白モチ米とココナツミルクで作る。モチ米は1時間ほど水に浸して
おいてから、15分くらい蒸す。それを火からおろし、その半蒸しのモチ米に、ココナツ
ミルク・パンダン葉・塩を一度沸騰させたものを加えてかき混ぜ、モチ米にココナツミル
クが染みこむようにする。そのあと、もう一度30分くらい蒸して、蒸し上げる。

ドリアンの層はまず、ココナツミルク・塩・砂糖をボウルに入れてよく混ぜる。そこにコ
ーンスターチとドリアンの果肉を加えて均一にする。別の鉢に鶏卵を溶き、ドリアン層を
そこに入れて両者を混ぜ合わせる。

型にモチ米層を入れてギューギュー抑えつけ、隙間がないようにする。上面を平らにして
からドリアン層をその上に入れ、弱火で15分くらい蒸して完成させる。下のモチ米層は
薄く、上のドリアン層は厚くする方がおやつには適しているだろう。

risoles durian
リソレスは肉・野菜・芋などを細かくして混ぜたフィリングを小麦粉の皮で包み、油で深
揚げした食べ物だ。フランスやイベリアで先に一般的になったように思われるので、その
点に着目するなら、ポルトガル人がヌサンタラに持ち込んだものかもしれない。

一方、皮を使わないで、混ぜ合わせたフィリングにそのまま小麦粉とパン粉をまぶして周
囲に層を形成させたクロケッと呼ばれるものがフランスから周辺諸国に伝わり、オランダ
人もそれを東インドに持ってきたから、kroketもインドネシア語として存在している。イ
ンドネシアのクロケッはジャガイモをフィリングのメインにしていて、日本のコロッケに
よく似ている。形は円筒形で日本のものより小型であり、そこにチャベヒジャウが一本突
き立てられているから、日本人にはそれがコロッケだとは思えないだろう。[ 続く ]