「ヌサンタラのサンバル(5)」(2023年04月14日)

山のように高く海のように広いサンバルの世界で高名なものをかいつまんで見てみること
にしよう。古い書物の中に頻繁に顔を出すサンバルバジャッがサンバル界のアイコンであ
るかのようにわたしは思っていたのだが、上の通り現代インドネシア人の間でまったく人
気がない事実に驚かされた。

sambal bajak
水田を鋤きで起こした直後のような泥っぽく乱れた印象から命名された。これはバンテン
地方が発祥とされていて、トウガラシ、ニンニク、トラシその他のブンブを油で炒め、す
りつぶして和えたもの。
スンダ語ではsambel bajagと書かれる。鋤のイ_ア語標準表記がbajakだ。スンダ地方で
はこれをsambel caloと呼ぶこともある。スンダ人のララパンは野菜の生食だが、たいて
いのひとは生野菜をサンバルと一緒に食べるのを好む。スンダ人のサンバルバジャッの作
り方は、まずトウガラシ・トラシ・赤白バワン・トマトを細かくすりつぶしてから炒め、
そこにサラム葉・スレー葉・ナンキョウと水を加えて煮込む。グダン葉・パパヤ葉・長豆
の葉のララップに合うそうだ。

sambal penyet
サンバルバジャッの変種のひとつ。材料は赤トウガラシ・チャベラウィッ・赤白バワン・
ククイまたはカシューナッツ・トラシ、そしてトマトをたっぷり使う。材料を十分に炒め
てから全部をすりつぶし、塩砂糖を加えて作る。
魚料理・揚げた豆腐やテンペ・茹でたり揚げた卵やナスなどに好まれる。ペニェッという
名称は上から押さえつけてへこませることを意味しており、揚げ豆腐などの中央をへこま
せ、そこにサンバルをのせて食べる食べ方を指しているようだ。

sambal petis
これもサンバルバジャッの変種のひとつで、サンバルバジャッに炒めたプティスと湯が足
し込まれるから、中にプティスが溶け込んでいる。すりつぶすときにピーナツが少量混ぜ
られ、サンバルに溶け込まされることもある。

sambal terasi
インドネシアでもっとも一般的に広まっているのがサンバルトラシ。マレーシアのサンバ
ルブラチャンの姉妹品とも言えるようだ。だがサンバルトラシの方が酸味と発酵が強いた
めに味わいの強さが違うとインドネシア人は語っている。
素材は赤/緑トウガラシ・トラシ・塩砂糖・ライムのしぼり汁が使われる。ライムのしぼ
り汁の代わりにトマトをすりつぶしたものが使われることもある。
スンダ人のレシピだと、素材はトウガラシ・トマト・リモミカン・塩砂糖・トラシを焼い
たものが使われ、トウガラシを炒めてからすりつぶすひともいれば、生のまますりつぶす
ひともいる。トマト以外の素材を全部まとめてすりつぶし、トマトを最後にすりつぶして
加える。

sambal asam
サンバルトラシの変種で、タマリンドが加えられている。

sambal tomat
生のトマトあるいは時にトマトを炒めたものをすりつぶしたり細切れにしてサンバルに加
えたもの。
[ 続く ]