「ヌサンタラのサンバル(9)」(2023年04月20日) sambal dabu-dabu スラウェシ島北部のマナドやゴロンタロ地方独特のサンバル。メキシコのサルサソースに 似ている。トウガラシ・トマト・キュウリ・赤バワンを細かく切って塩を加え、熱した食 用油を上からかけたもの。 sambal lu'at クパンが発祥の東ヌサトゥンガラ地方の郷土サンバル。トウガラシ・ライム・バジル・シ バ葉で作る。これにタケノコを加えて加熱し、おかずにすることもある。 Sambal bongkot ボンコッはトーチジンジャーを指している。トーチジンジャーの茎・トウガラシ・赤バワ ン・焼いたトラシ・ライムのしぼり汁・塩砂糖で作る、バリの郷土サンバル。辣・甘・酸 が混じり合った味覚。 Sambal matah バリのサンバルでもっとも有名なのがサンバルマタ。バリ語のmatahはインドネシア語の mentahを意味している。生(なま)のこと。チャベラウィッ・赤バワン・セレを細かく切 り、熱したヤシ油を上からかけたもの。 サンバルの基本はトウガラシと他の素材をすりつぶす点にある。一見して誰にでもできる ように思えるその作業が実はひとによって技術的な巧拙があり、その成果は歴然と味覚に 表れるとインドネシア人は言う。美味いサンバルが誰にでも作れるというものでないこと は、サンバルの世界で通説になっている。先に述べたように昔から、サンバル作りの上手 な女奴隷は宝石のような価値を背負ってきらめいていたのである。サンバルソース製造販 売事業が興る扉がそこに開かれていたのだ。 美味いサンバルを作って来たひとびとの間で、それをパック詰めして世の中に流通させよ うとするアントレプルヌールがヌサンタラのあちこちに生まれた。このひとたちは概して 小規模家内工業方式で堅実なビジネスをおこなっている。 サンバルの入った150ccプラボトルに貼られたラベルには、「サンバル ブ スサン 〜インドネシアで二番目においしい」と書かれている。一番は何なのかという質問に事業 主のヤヤッさんは、「一位はケチャップが握っているんですよ。」と答えた。つまり、サ ンバルはケチャップの需要量に及ばないということをそれは意味しているようだ。 バリに住むヤヤッのサンバルビジネスは2010年に始まった。この事業を始めてから、 かれはサンバルマタを加熱してやると日持ちが3日になることを発見した。加熱しない普 通のサンバルマタは2日しか持たない。 この事業は30万ルピアの資金で始めたとヤヤッは物語る。最初は100ccプラカップ に入れて一個1万ルピアで販売していた。だがプラカップに使うあのふたでは中身が簡単 に漏れてしまう。それで150ccのプラボトルに容器を変え、一個2万2千5百ルピア にした。月平均3千ボトルが販売されている。詰められるサンバルは6種類ある。sambal bawang, sambal teri, sambal udang, sambal ikan asin, sambal petai, sambal terasi。 素材のトウガラシはクルンクン産のものだ。素材選択の調査を行っていたとき、ルジャッ 売りが「もっとも辣いトウガラシはクルンクンのものだ」とコメントしたのを参考にして 調べ、かれもそれに倣った。トラシは東ジャワのジュンブル県プグル産のものを取り寄せ ている。 奥さんの名前から採った「サンバル ブ スサン」はバリ島内だけでなく、ジャカルタか らバンドン、そして国外にも送り出されている。[ 続く ]