「クドゥスギイデオロギー(後)」(2023年04月28日)

< マネーレジーム >
クドゥスギイデオロギーの強まりは悪い支配レジームを生む。マネーレジームだ。統治行
政と国家活動は精神性・人道性・団結・公平で福祉的な民主主義を基盤に踏まえた理想主
義的価値観によって動かず、金銭の価値によって動くようになる。ワニピロというキャッ
チフレーズの人気は暮らしのさまざまなラインで猛威を振るっている取引原理の習慣をシ
ニカルに象徴している。権力層に所属して国の財産をかき集めるための唯一のキーワード
がマネーなのである。

マネーレジームにおいては、価値と規模は物質のみが定める。もしあなたが大統領・大臣
・知事・市長/県令・郡長・町長のいずれかであれば、あなたが何をなしたか、公共に対
してどのような成果をもたらしたかは尋ねられず、「あんたの財産はどれほどか?」が問
われる。もしあなたが「まだたいした財産は持っていない」とか「まだ貧しい」などと答
えるなら、みんなは一斉に不審を抱く。そして次の質問が追いかけて来る。「まさか!あ
んたにとっては金を好きなようにつかみ取るだけでしょうに。」


たまたま行政遂行や国家運営の役に就いていたなら、そんな質問には腹を立てるべきだろ
う。金持ちになることだけを理想にしているように思われているのだから。そんな風に見
られるのは人格と尊厳に対する侮蔑ではあるまいか。

しかし現代は自尊心や尊厳に対する感受性が薄まるばかりの時代なのだ。反対に、自分の
かき集めた莫大な財産を誰もほめてくれないなら、かれはきっと残念に思うだろう。だか
ら自分が財産持ちであることを見せびらかすために、豪邸を建て、高級自動車を何台も並
べ、広大な土地を持ち、数字が何桁あったか思い出せないくらい巨額の銀行口座残高を持
つ必要があるのだ。


そのような成功の証明を手にしたかれは、国家への貢献・世の中へのコミットメント・正
義・質素な暮らしの重要性を一般大衆に教え諭すことを自分が行ってしかるべきだろうと
考えるにちがいあるまい。更には、汚職を呪う言葉を常に大衆の耳に入れなければならな
いとも考えるだろう。たとえ汚職撲滅の権限が自分の手中にあり、しかもその問題には一
切かかわらないようにしていたとしても。


マネーレジームの行き着くところは、福祉を希求する国民にとっての空言レジームなので
ある。福祉ばかりか、贅沢までもが権力階層のひとびとに買い占められたのだ。マネーレ
ジームの中に生まれた優良な生物がかれらなのだ。マネーレジームの中心イデオロギーは
もはやパンチャシラでなくなり、それはクドゥスギに取って代わられたのである。

それに向けられる批判のすべては嫉妬から発しただけのものだとかれらは思うだろう。そ
う考えることでかれらの気持ちは落ち着く。落ち着いているかな?[ 完 ]