「ダウェッアユ(1)」(2023年05月08日)

チェンドルとダウェッは同じだ、いや違う、という論争があるらしい。cendolという名前
で作られるこの食べ物と、dawetという名前で作られるその食べ物を比較すると言っても、
実際に行われるのは誰かが作ったものを比較しているのではあるまいか。たとえばネニさ
んの作ったチェンドルとポピさんの作ったダウェッは大幅に違っていても、ノナさんの作
ったチェンドルとはよく似ているということは起こるだろうと思われる。あるいはバンド
ンの?という屋台で作られたチェンドルとソロのZという食堂で出たダウェッを比較する
というような、個体差があって当然のものを、何を根拠にして標準化するのだろうか?ど
うもその辺りの事情が世間知らずのわたしにはよく分からない。

ひとそれぞれの主張が何を基準にしているのかよく分からないから、この論争はどうも不
毛の印象がぬぐえない。たとえば、違っていると主張する意見の中には、ダウェッは米粉
を使うがチェンドルは緑豆の粉やサゴ粉を使っているというものがあるのだが、ダウェッ
作り売り人の中に廉価に販売しようとして米粉を使わない者がおり、反対にチェンドルは
もともと緑豆粉が優勢だったが今では米粉を使うのが普通だという話になっているから、
その主張者はこの反論をどうさばくだろうか?


イ_ア語ウィキペディアには、チェンドルの素材はかつて緑豆粉だったがいまでは米粉で
作られると記されている。しかしジャカルタのとあるホテルシェフによれば、最低二種類
の粉を混合するのだそうだ。使われるのは米粉・タピオカ粉・サゴ粉・緑豆粉とのこと。

粉をこね、緑色を加えてドウを作り、それを型から押し出して小さい円筒の粒にしたもの
がチェンドルであり、ココナツミルクとグラメラの甘くコクのある液体にたっぷり入れて
液体を飲みながらチェンドルを食べる。それがエスチェンドルという名の食べ物だ。

この食べ物は東南アジア一帯でどこでも人気のある食べ物になっていて、シンガポール・
マレーシア・タイ・ベトナム・ブルネイ・カンボジャ・ミャンマーでもお目にかかること
ができる。


ウィキペディアにはこの食べ物が西ジャワでチェンドルと呼ばれ、中部ジャワではダウェ
ッという名称だと書かれている。チェンドルという言葉が記されている最古の文献は18
66年に出されたOost-Indisch kookboekだそうで、そこにはTjendol of Dawetと両方の
名前が書かれている。オランダ語のofは英語のorに対応しているから、オランダ人がそれ
らを同一視していたことがそこからわかる。

1869年出版のSupplement op het Maleisch-Nederduitsch Woordenboekにもtjendolが
採録されていて、サゴ・ココナツミルク・砂糖・塩で作られる薄いペーストまたは飲み物
と説明されている。


エスチェンドルの作り方の一例はこうだ。
スジ葉またはパンダンペースト、米粉または緑豆粉にタピオカ粉を混ぜたもの、湯冷まし、
塩、氷塊でチェンドルを作る。
1.スジ葉と水をブレンダーにかけてから濾す。
2.材料全部と1を鍋に入れて混ぜ、加熱する。ドウが煮詰まって粘ってくれば火から下
ろす。
3.大きめのボウルに湯冷ましと氷塊を入れて温度を均一にする。
4.まだ熱いドウをチェンドル型に入れ、ドウを押し出してボウルに落とす。
5.次にグラメラと粉砂糖・パンダン葉・塩・ナンカの実でキンチャを作る。
6.冷えて固まったチェンドルをグラスや椀に入れ、キンチャをかけてからココナツミル
クを注いで供する。エスチェンドルにナンカの実が加えられることもある。[ 続く ]