「ジャワ人の起源(7)」(2023年05月12日)

船隊はヌサクンダンの東部海岸にある、ジャウィが埋め尽くしている場所で移住者を上陸
させた。この移住者集団は自分たちが上陸した場所をジャウィと呼んだ。そこには広い川
の河口がある。アジ・ケレルはその川を遡航して上流を探査し、定住に適切な場所を決め
た。その川は後にスマンピルと名付けられた。スマンピル川は今もスラバヤの町中を流れ
ている。

ところがこの植民者集団は不幸な運命に見舞われた。ふた月が経過してから、異様な姿を
して異様な振舞いを見せる得体の知れない者たちが外来者を襲いはじめたのだ。暴れ回る
巨人、憎しみをたぎらせてつかみかかる妖怪、さまざまな姿のおどろおどろしい者たちが
植民者を襲撃した。この緊急事態を報告するために急使が祖国に送られ、使者はルム王に
事態を詳しく報告した。

王は高僧たちを集めて相談した。学識と神秘の力に長けた高僧たちよ。既にお聞きの通り、
ジャウィの地に棲む怪物どもが余の民4万人を殺しつくそうとしている。われわれにどの
ような手が打てるのか?

高僧たちはしばらく相談し、長老が王に言上した。
「それらの怪物や妖怪どもをジャウィの地から追い払うために、強力な魔力を持つ材料を
調えましょう。それを使ってやつらをその土地から追い払うのです。やつらは必ずジャウ
ィの地から去るでしょう。」
「よろしい、では早急にその手段を講じ、ジャウィに住む余の民を救ってやってくれ。」
高僧たちはすぐに必要な材料をそろえ、また念力に優れた僧を選抜して出発の準備を整え
た。王の祝福を受けて、船はコロマンデル海岸からジャウィを目指した。


一行がジャウィの植民地に到着したとき、最終的にそこに住んでいる者は40家族になっ
てしまっていたのである。一行はさっそく魔物どもを追い払うための行動を開始した。魔
力を持つ材料を広範囲に散らばせ、必殺の呪文をジャウィの空に舞いあげたとき、大地は
どよめき、海は泡立ち、山は崩れんばかりに揺れ動いた。

ジャウィに先住していた魔物たちはそのありさまに驚き、恐怖の叫びをあげて逃げまどい、
隠れ場所を求めて山の裂け目や洞窟に飛び込み、海中に身を投じ、あるいは空中高く飛び
去って消えた。

それが終わると高僧たちはジャウィの土地の地味を調べ、こんな肥沃な土地はめったに見
られない、とコメントした。「ここは農業に適しており、人間が居住するのにもってこい
だ。この植民地は将来必ず?栄するだろう。」と太鼓判を捺した。


大成功をおさめた魔物討伐隊は意気揚々と故国に引き返して行った。王はその報告を聞い
て相好を崩した。王は次の計画に取り掛かったのである。

翌日、王はふたたび宰相に命じた。もう一度2万人の男と2万人の女をジャウィの植民地
に送れ。農耕のための道具を持たせるようにせよ。そして現地で6ヵ月間暮らせるだけの
食糧も積み込め。

この第二次植民団は宰相が直々に指揮を執った。現地に着くと、いくつかの集落を作らせ、
村に野獣が侵入できないようにして野獣の害を防いだ。魔物たちにはそんなものなど何の
障害にもならなかったが、野獣に魔物の真似はできないから、人間の安全と保護に大きな
効果があがった。

各集落は村長が統率する形にし、全集落を統率する最高統治者にカンノという名の知識人
を指名した。別の島へ逃亡する者が出ないようにするため、一隻残らずすべての船をコロ
マンデルに戻した。

この第二次植民団はその地に定住して繁栄するようになり、人口が増加した村々では若者
たちが新たな土地を切り開いて集落を作りはじめた。このようにしてジャワ島に人間の居
住地がどんどん拡大して行った。これは西暦紀元前350年ごろのできごとだ。[ 続く ]