「ジャワ人の起源(8)」(2023年05月15日)

上のような話は、人間が住むようになる前のジャワ島がいかに魑魅魍魎の巣窟であったか
を主張しているように思われる。ジャワ人の祖先が持った集合記憶が現代ジャワ人の心理
基盤に神秘主義を温存させる原因をなしている実態をそれが説明しているかのようだ。

スワルディ・エンドラスワラ博士が書いているように、宇宙ができたとき、人間界はまだ
そこに存在しておらず、超自然界だけがそこにあったというのが真実かもしれない。今、
この人間界にいるわれわれが霊的存在と呼んでいる者だけが原初段階の宇宙に住んでいた
のだろう。もともとこの宇宙はかれらのものだったのであり、いったい何を目的にしたの
かよく解らないが、その宇宙の中に異次元的に人間界というものが箱庭のように作られた
という仮説を立てても、論理のつじつまは合うだろう。

箱庭を作るためにビッグバンが起動され、そのエネルギーが箱庭を拡大させる方法で時を
作り出し、その時空の直線的進行あるいは立体的拡大が箱庭の歴史というものを紡ぎ出す
ことになった。だがそのエネルギーが無限であるかどうかはそのプロジェクトに関わった
者しか知らない。

もしも有限であればそれが尽きる時、進んでいた時空は停止するだろう。そのあとに後退
や縮小、つまり逆方向への動きがビッグバン起動前の状態目指して起こらない保証もある
まい。それよりもっと直截的に、少なくともこの人間界と名付けられている箱庭は、それ
を作った者がもう無用だと思えばすぐ反故にされてクラッシュする脆弱ではかないものの
ようにも思えるのである。そうでないと誰が言いきれようか?


宗教という名において人類がこの箱庭を作った者を崇敬し崇拝しているのは、本当に妥当
適切な振舞いなのだろうか?霊界の実験室で、白衣を着て箱庭のあちこちをいじくってい
る眼鏡をかけたグンドゥルウォが箱庭の創造主かもしれないではないか。

いやそれよりも、人間界が創造主と呼んでいる者がグンドゥルウォ博士であったとしても、
人間界で発生し、変化し、滅んでいく何百億何千億という存在物と現象をグンドゥルウォ
博士がひとつずつ手ずから作ったとは考えにくい。そんなことをしていては、物理的に間
に合わない気がするのだ。

思考のこの局面でいきなり神秘主義を使って論理を飛躍させるのも考えものだ。作り出す
ということは、たとえ神秘主義であっても何らかの手間暇を要するはずだ。魔法の杖を振
るだけでも手間暇になる。呪文を唱えるのであればなおさらのこと。魔法の杖を振ったら
何百億何千億という存在物と現象を完備した箱庭が一瞬のうちに出来上がったのか?いや、
この箱庭の歴史はさまざまな存在物が時間差を置いて発生して来たことを示しているので
はなかったろうか。

おまけに時間差を置いて出来上がったものがあちこちで発生‐変化‐滅亡の動きをてんで
んばらばらに起こすのを指揮するとなれば、魔法の杖の振り通しにならないだろうか?こ
のあたりで神秘主義理論は破綻してくれるようにわたしは思うのだが、どうだろう。

とはいえ、グンドゥルウォ博士が粘土をこねて何かの形を作り、それに生命を吹き込まな
くても、箱庭の中に見られる現状を成就させる方法はもちろんあるとわたしは考える。


箱庭が原理あるいは法則に従って動くようにすればよいのだ。そうすれば箱庭の中は与え
られた原理に従って自転するようになり、個々の存在物や現象の発生‐変化‐滅亡の動き
は箱庭の中を埋めているそれらのものが自分で勝手に行うようになるはずだ。箱庭の中を
自転するように仕組めば、グンドゥルウォ博士は創造作業に手間暇を取られることなく、
観察に専念できるだろう。博士のプロジェクトは創造でなくて観察を主眼に置いていたの
ではなかったろうか。[ 続く ]