「ジャワ人の幽冥界(5)」(2023年05月29日)

かれらの星気体は真の死が訪れるまで遺体と深くつながっている。特に悪の生を送った者
の四大素は呪文や誓いを述べることで悪霊にすることができ、他人に復讐したり他人を陥
れようとする者に利用される。この悪霊たちは石を投げたり、シリを噛んだ唾を吐きかけ
たり、ドアを何回も叩いたりして人間を怖がらせたり、あるいは病気にさせたり、災いを
仕掛けておいてそこに陥れる方法で人間を殺したりする。この悪素はまた、グナグナでひ
とを惚れさせるときにも使われる。

本当は霊的存在でないにもかかわらず、あまりにも永く地上界で生きたために自分の姿を
何かに変える力を得た者もいる。かれらは死後も一族を守ってやりたいとか何らかの目的
を達成したいと存命中に誓った、善き生を送った人間の霊魂であり、地上界に居続けるこ
とを望んでいる者たちだ。

4.黒魔術を持つ者
このカテゴリーは生前に黒魔術を身に着けた人間の霊だ。かれらは呪文を唱えることで自
分の身が他人から見えないようにしたり、動物の姿や他の物の形に変えたりする。死の前
に呪文を唱えることで黒魔術を持つ人間は自分の姿を好きな形に変えてしまう。ジャワ人
はそれをmemediと呼んでいる。しかしその姿は死後四十日間しか続かない。
黒魔術を持つ者が自分の姿を変えるのは悪事を行うことが目的であり、したがってムムデ
ィは破壊を行う悪霊ということになる。

人間の霊魂に由来しない、人間の思惟によって作られたルルンブッもいる。ある人間に向
けられた想念あるいは意識の集中は、それが善であれ悪であれ、最後にはひとつの形を作
り出す。これが四大素あるいは形姿素と呼ばれるものだ。形姿素が影と混じると目に見え
ないムムディになる。


CWレッドビーターはその著「アストラル界」の中で次のように書いている。
ひとが死ぬと人間が持っている諸要素の分離プロセスが起こり、コモロコに移ることで人
間の生は終わる。そのあと、コモロコから天上界への移動が行われる。しかし霊魂が遺体
から離れなければ、天上界でのそのような現象は起こり得ない。霊魂はまた、アストラル
界に達する前にコモルポから分離しなければならない。この過渡的空間に残るものは霊魂
の影と呼ばれている。霊魂の影は自我を持っていないが原形を詳細にとどめていて、おま
けに想念や関係するさまざまなものを持っている。影は高位にある元来の自我から離れて
しまったものであるため、悪の影響を受け入れやすい性質になっており、そのために影が
魔術を使う者に容易に操られるようになるのは不思議なことでない。

より低位のマナスのすべての部分が分離してしまったために腐敗した状態の純粋な星気体
の遺体が皮あるいはウェトロだ。意識や想念をまったく持っていないために、皮が示す姿
は雲が風に吹き流されるようなありさまで星気の流れに流されるだけ。影が方向を持たず
に浮遊しているのと異なって、皮は特定の方向に流れて行く。

腐敗プロセスに入った人間の遺体の上に何か影のようなものが浮かんでいるのを、霊感の
豊かなひとは見ることができる。公共墓地でムムディを見たという話はたいていがこの現
象だ。その種の話の中でムムディと呼ばれているものは、埋葬されたばかりの遺体から発
して墓の上に漂う緑っぽい白色の揮発体の形をしている霊魂の皮なのである。遺体の腐敗
と分解プロセスの進行がその現象を生んでいるのだ。

このような段階の皮は霊魂の影と同じように自覚や想念を持っていない。しかし腐敗プロ
セスの渦中にある皮は黒魔術によって怖ろしい姿に変化する。


地上界で生きていた人間が天上界に移動するとき、徐々に分解の進行する三つの遺体が後
に残される。具象的な肉体、エーテル複写体、形成プロセスの逆をたどって分解していく
コモルポの三つだ。

生きている皮についての詳細を述べるなら、それはもっとも表面の層であるため人間の形
をしておらず、また思惟も目的も持たない。存命中に抱いていたすべての生・想念・欲望
・願望は四大素になる。だが皮自体は人間でない。[ 続く ]