「ジャワ人の幽冥界(終)」(2023年05月30日)

霊魂の影と同様に、皮もトゥンバルやグナグナに利用される。ジャワにも存命中あるいは
死後に自分の姿を変えて吸血鬼・人間コウモリ・オオカミ・トラ・ワニ・蛇などに変身す
る者がいるし、かれらは呪文を使って他人をイノシシや馬に変えることもする。


人間に由来しないムムディに関して、アニー・ベサントの「カルマ」と題する著作が四大
素についての解説を与えてくれるだろう。

人間が死ぬと、人間の想念はあるプロセスを通して心情界に移り、形姿を持つ。それは霊
魂の影に付随して動く。それが想念の姿と呼ばれるものだ。想念の姿はその強さに応じて
存在期間の長短が決まる。善の想念は建設的な力を持ち正義を生む一方、悪の想念は悪霊
の姿に化身する。

この想念の力は空虚な空間を満たし、生きている人間の内面にも浸透する。人間というも
のを、意欲や欲望などの性質が表出する源泉で満たされている空間であると見なすことが
できる。その表出が感受性の強い者や心理が乱れている者に影響を及ぼす。表出する流れ
の動きはバランスしている。

仏教徒はそれをスカンダと呼び、ヒンドゥ教徒はカルマと名付けている。僧侶や明哲なひ
とびとはその流れを統御するが、蒙昧なひとはそれに対する意識が働かないために放置す
るだけだ。


想念の力に関連して、われわれは古代エジプトで行われていた習慣を思い出すだろう。神
聖な象形文字には色が付けられていたことを。その書写を命じられた者が色の間違いを犯
すと、死刑に処せられた。

現代のわれわれにとって、霊魂の影すなわち四大素と色の関連性を知るのは重要なことで
ある。霊魂の影にとって色は、人間にとって言葉を話すのと同じくらいの重要性を持って
いる。語られる音として示される色の種類は思惟を行う者が欲する動きの形態に従う。怒
りに満ちた思惟は赤色のまたたきを発生させ、想念は震えて赤色を作る。赤色のまたたき
は霊魂の影を呼ぶサインであり、そのひとつが粉砕と破壊の任務を帯びた想念になる。そ
の維持期間は想念の強さに加えて変身後に与えられる付加的源泉次第だ。


想念はその創造者によって助けたい相手あるいは滅ぼしたい相手といった特定の個人に向
けられることもできるが、それは創造者に付着した霊魂の影の種類による。特定の対象者
に送られた創造者の想念は周辺にある諸パワーを磁石のように引き寄せる。悪の想念は悪
のパワーを、善の想念は善のパワーを。

送られた想念が純粋で潔癖なものであれば、それは周辺から善なる諸要素を引き寄せ、元
の想念が持っていた力に加わって何倍ものパワーに強化される。反対に邪悪な創造者が送
る想念も、周辺の悪を呼び集めて何倍ものパワーを持つようになり、その集まったパワー
が周辺に悪のエネルギーを振りまくことになるのである。

複数のひとびとが集まって悪の想念を合体させ、アストラル界に向けて継続的に放射する
なら、そのパワーは現実のものと化して世の中に戦争を引き起こしたり、あるいは破壊的
な現象をもたらすことができる。

それはつまり、破壊的なカルマの集合体はその邪悪な想念を抱いた者自身を襲い、かれら
を滅ぼすことになるという論理を示している。人間は地上界で抱いた想念および行った行
為に応じた運命をたどることになるのだ。犯罪・疫病・災厄のひしめいている現象はその
理論で説明することができる。


呪文を通して発生させる想念の力が引き起こすメカニズムにティアンパセッは気付いてい
なかったため、この面についてかれらはすべてをガイブの意図に帰した。ガイブに願うこ
とで善き行為がなされて善き運命に向かい、反対に邪悪を願う者は邪悪な行為を行って悪
い運命をたどるという因果応報の観念が作られたのである。[ 完 ]