「ジャワ島妖怪大全(5)」(2023年06月09日) グンドゥルウォはウェウェの夫であり、かれら夫婦は遺体の埋葬が不完全だった死者の霊 魂から生まれたとされている。墓地から近い家の扉が夜中にノックされたり、人が通りか かると風もないのに背高い木が大きく揺れたりすることがある。そんなことが起こったら、 新しい墓でアルクルアンを読んでやって霊を鎮まらせることが行われる。 自殺者の霊がよくグンドゥルウォになると言われており、首つり自殺をすると、男はグン ドゥルウォ、女はウェウェあるいはプリになるそうだ。 グンドゥルウォは小さい子供の母親に狙いを付けることが多い。あるいは小さい子供をさ らってジャングルの中に連れ去ることもする。それはウェウェやプリの行動と同じだ。グ ンドゥルウォが淋しい女を狙うように、ウェウェやプリも淋しい男を狙う。 グンドゥルウォは好色な上にいたずらが大好きで、ふたりだけでいちゃついているカップ ルがあると、その男の方になりすまして女といちゃついたりする。ところが間の外れたタ イミングで声を出したり、おかしな振舞いをしたりするから、女はびっくりして逃げ帰っ てしまう。 結婚初夜のカップルが一晩中かかってもセイコーしなかったというケースはグンドゥルウ ォが邪魔をしたためだという話もある。結婚する者はお祈りをしっかりと行わなければな らないという戒めのようだ。 2 wewe ウェウェはグンドゥルウォの妻だ。小さい子供を抱いて暗く寂しい場所に現れる。かの女 はしばしば、ムスリマが礼拝の際に着るルクのような白く長い服をまとって現れることも ある。夕方ひとりで歩いている子供をさらうウェウェはwewe putihあるいはwewe gombel とも呼ばれる。 3 kemamang 火の妖怪であるクママンは特定の場所に出現する。その火は1キロくらい先から見える。 ところが火のある場所に近付くと、火はやってきた人間の前後左右で現れたり消えたりす る。その人間が目的の家にたどり着くころには、火は姿を消してしまう。 4 banaspati 燃え続ける火が頭になっているラッササがバナスパティだ。動く時には足が上頭が下の体 勢で、手を使って素早く動く。バナスパティに出会った者は、火から逃れようとしてすぐ に逃げ出す。 5 thethekan テテカンの身体は小型のラッササで頭が猿になっている。夜中に木の下を通る人間を怖が らせるために木の上でタンブルやクントガンを鳴らしたり、通る人間の前や後に木片や枝 を落としたりする。 6 ongklek-ongklek オンクレオンクレは墓地に近い木に住むハントゥで、ひとが通ると幹がクレックレックレ ッと音を立てるほどその木を大きく揺らす。木でなくて竹だったりすると、竹の先が地面 に付くくらい倒しては戻すことをする。 7 welwok 川で溺れたり、猫いらずを飲んだり、殺害されるような不自然な死に方をした妊婦の霊魂 がウェルウォッになる。この霊は復讐を願望にしているから危険だ。たいてい半裸で、身 に着けているものも汚れており、うすぎたない女の姿をしている。[ 続く ]