「ジャワ島妖怪大全(6)」(2023年06月12日)

8 jrangkong
闇の中を徘徊する骸骨がジュランコン。子供を殺された親が姿を変えたものと言われてい
て、子供や孫にその姿を一瞬だけ見せる。寝ている者を起こして怖がらせたり、点ってい
る電灯を消して部屋の中を徘徊したりする。

9 glundhung pringis
グルンドゥンプリギスは頭があって胴がなく、腸がしっぽになっているハントゥだ。顔の
付いている禿げ頭がヤシの実のように転がるのである。この怪異を目にした者はびっくり
仰天して叫び声をあげる。気丈でなければ精神や体調がおかしくなるだろう。しかしグル
ンドゥンプリギスは人間を驚かせて喜んでいるだけなのだが。

10 umbel molor
夜に現れるハントゥで、こどもを怖がらせるのを好む。ウンブルモロルはただ鼻から汚物
を出すだけなので、大人はたいして怖がらないのかもしれない。しかし追い払おうとする
と向かって来るので、安易に手を出さないほうがよい。

11 lelepah
ルルパはやせてのっぽのハントゥ。魚を生で食べることを好むから、Lelepah pakanane 
iwak mentah.という諺ができた。ところがジャワ語のiwakは魚と肉を意味しているから、
このことわざは生肉・生魚と理解されるのが普通であり、生肉・生魚を食べるやつはルル
パだから人間はそれらを食べるなという教えに使われた。ジャワ人が祝祭を行うとき、諸
霊に捧げる供物の中に生肉のコマ切れが必ず入っている。

12 lampor
夜中に遠くの場所で大勢が火を灯して歩いているのを見ることがある。大勢の者はまるで
整列行進しているみたいだ。火は一瞬間消えて、そしてまた点く。そんな点滅が繰り返さ
れる。ところがそれを追いかけて近くまで行くと、だれもおらず、火も見えない。ハント
ゥの兵隊がやっていることだと言われている。

13 citnonong
頭が突き出ているトゥユルのような姿のハントゥで、見るからに悪相をしている。チッノ
ノンは働いている人間にちょっかいを仕掛けて邪魔をする。

14 thongthongsot
身体は人間、頭は動物という姿をしている。悪人のお偉いさんを痛めつけることを好む。
汚職者や圧制者が夜に仕事していると、座っている椅子がユサユサ揺れることがある。あ
るいは、だれが撒いたかわからないトゲが椅子にばらまかれていたりする。それらはトン
トンソッのしわざだ。

C 女が化けた者
1 wedhon
白一色に身を包んだ女のハントゥで、汽車にはねられたりバスにひかれたり木から落ちた
りといった自然でない死のためにハントゥになったとされている。通行人にちょっかいを
出すのを好むために十字路にいることが多い。寂しい時間に通行人がやってくると姿を現
わしてピョンピョン飛び跳ねるから通行人は肝をつぶす。ウェドンが通行人を怖がらせた
いからそうしているのか、それともその通行人に興味を持ったから姿を現わすのかという
ことについては、後者のほうだという意見もある。[ 続く ]