「ジャワ島妖怪大全(7)」(2023年06月13日)

2 pocong
ポチョンも、虐待されたり堕胎したり首を吊ったりといった自然でない死のためにハント
ゥになった女の霊だそうだ。だからウェドンと似た者ではあるが、たいてい墓地の周辺に
いる。かの女はイスラム式埋葬のための白いカファン布を巻かれた姿で墓の外を歩く。そ
の辺りを通りかかる人間の前に姿を現わして、一緒について行きたいそぶりを示す。

3 kuntilanak
妊娠中に死亡し、胎児も助からなかった女がハントゥになったものがクンティルアナッだ
と信じられている。出産時に母子ともに亡くなったケースも含まれる。不義の子を孕み、
その出産時に死亡した女はまちがいなくクンティルアナッになると言われている。そんな
ケースの中には、不義密通の結果できた子を堕胎しようとして亡くなった者もいるにちが
いあるまい。

クンティルアナッになり得る状況下に死去した女性の指・ひざ・ひじを針で突いておくの
がクンティルアナッにしないための方法だそうだ。妊婦がクンティルアナッに襲われない
ようにするには、川や水浴場で水浴や用足しをする際に釘・ナイフ・かんざしなどの尖っ
たものを持っていくとよいとも言われている。

4 sundel bolong
スンデルボロンは一瞬だけ女の姿を垣間見させて消える。身体の一部に穴が開いているが、
穴の位置は背中・腹・目・下腹部などいろいろに変化する。身体の一部をつかむと、そこ
に穴が開くそうだ。このハントゥは殺された娼婦の霊に由来していて、男を性的に誘惑す
ることだけを生きがいにしている。

5 peri
男に失望させられた美女の霊がプリで、特にその男に殺されたりした場合には必ずプリに
なる。悪い男への復讐の念を強く持っていて、その男が憧れる美女の姿になって誘惑し、
男の首を絞めて殺す。それが終わると、カラカラと大声で哄笑するのがプリの特徴だ。
プリは都会の喧騒から離れた静かな土地で暮らしており、しばしば美しい天女の姿で現れ
る。ハンサムな男に恋をすることもあるそうだ。

D 人間に飼われる者
人間に飼われて人間の手伝いをするハントゥをperewanganと言う。たいてい不自然な死に
方をした霊がこれになる。プレワガンを飼いたい人間はハントゥとの交信能力を持つドゥ
クンに注文する。しかし時にはプレワガンの方から特定の人間にコンタクトしてきて、そ
の人間を助け、それが終わると姿を消すようなこともある。この種のケースでは、プレワ
ガンは人間と何も契約をせず、純粋に人助けを行うことだけを目的にしている例がたくさ
ん見られる。

プレワガンを飼う人間は医療ドゥクンやプスギハン目当ての者が多い。医療ドゥクンが病
人を治療するとき、プレワガンがドゥクンに乗り移るのである。

プスギハンで人間を助けるのはたいてい悪いハントゥだ。プスギハンとは超常パワーを使
って金持ちになることを意味している。プスギハンのためのプレワガンは飼い主が約束を
厳格に守っているかぎり、たいへん飼い主に従順で忠実な存在になる。

1 dhenok dheblong
ドゥノッ・ドゥブロンは子供の姿のハントゥで、医療ドゥクンを助ける。昔カルタスラに
女性のドゥクンプレワガンがいた。この女性は子供を産んでまだ授乳期にあったある日、
赤ちゃんがいなくなった。探したが行方が知れない。しばらく経ったスラサクリウォンの
夜に突然子供が現れた。自分は赤ちゃんのときにいなくなった子供であり、母親を助ける
ために戻って来たと言う。母親は医療ドゥクンになってありとあらゆる病気を治した。腹
部の手術までしたが、メスも使わず血も一滴も流れなかったそうだ。母親が医療を行うと
き、その子供が母親に乗り移るという話だ。[ 続く ]