「ジャワ島妖怪大全(9)」(2023年06月15日)

5 menthek
メンテッは子供の姿の妖怪で、水田を棲み処にしている。イナゴを食べるのが好きだ。日
没直前に姿を現わすため、田んぼ仕事に出た農夫が夜まで帰ってこないと、メンテッに悪
さをされたのではないかとみんなが心配した。

メンテッは水田の稲がみのると籾粒を別の田の稲に移す力を持っている。それをされると
稔った稲は籾粒のないものばかりになり、収穫は失敗する。そのためにジャワ人が水田の
稲刈りを行うとき、必ずウィウィッを行う。ウィウィッはデウィスリに捧げる供物を水田
の真ん中に置いて、みんなでそれを取り合う伝統行事だ。そうすることでメンテッの害を
防ぐことができる。

E 動物に由来する危険な者
1 bulus putih
威嚇的な大型のスッポンがブルスプティだ。しばしば、水源の守り神になっているハント
ゥである。水源で水遊びをしたり小便をかけたりするとブルスプティに襲われる。もしも
ブルスプティに?まれたなら、人間は死ぬ。

2 kutuk lamur
ikan kutukは雷魚の一種であり、ikan gabusとも呼ばれている。川で夜釣りをしていると
超巨大なクトゥッ魚が出現して驚かされることがある。それはハントゥなのだ。

3 truna lele
巨大なナマズのハントゥ。トルナレレは水中の大岩に棲んでいて、そこに人間がナマズを
取りにやってくると姿を現わして怖がらせる。このハントゥを怒らせると人間を攻撃し、
毒針を刺して殺す。

4 tengis
巨大な川ガニの姿をしている。夜に出てきて、人間が近くを通ると~ギス~ギスという音を
出すのでトゥ~ギスと名付けられた。この妖怪は音で人間を惑乱させるだけ。近くに悪事
を企てている者がいると、~ギス~ギスという音は一層強くなる。

5 babi ngepet
ブタの姿をしたハントゥで、プスギハンに使われる。バビ~ゲペッを飼うと、だれでも突
然大金持ちになる。

金を持っているのにまだ全額をはっきり知らない人間が往々にしてターゲットにされるし、
あるいは隣近所で祝祭があると、夜はたいていバビ~ゲペッが町内を徘徊する。ターゲッ
トになった家の裏扉から屋内に侵入するのがいつもの手口で、そのときしっぽを裏の壁に
こすりつけると、その家のひとびとは突然睡魔に襲われて眠ってしまう。そうしてからバ
ビ~ゲペッは誰にも見とがめられずに悠々と仕事をして引き上げるのである。

6 jaran panoleh
後ろを振り返っている馬の姿をしたハントゥ。プスギハンのために飼う者がいるが、本物
の馬でなくて馬の置物の場合もある。早く金持ちになれるように、馬に香を焚いて願をか
けるというわけだ。このハントゥは商人が持つのにふさわしいものである。

7 klabang sayuta
クラバンはムカデ、ジャワ語のユタはインドネシア語のjutaの意味で、この言葉は百万匹
のムカデを意味する。飼い主は攻撃的な百万匹のムカデを神秘的な方法で飼っている。そ
れは同じような効能を持つCandhabirawaやbala sewuの護符を祭るのと類似の方法で行わ
れる。[ 続く ]