「ジャワ島妖怪大全(10)」(2023年06月16日)

チョンドビロウォもボロセウも敵を倒すための秘術であり、その点で百万匹のムカデとよ
く似ている。チョンドビロウォは自分の身体が敵に斬られると身体が二つに分かれて二人
の自分になる。斬られるたびに倍増して行き、最後に大勢の自分が敵のとどめを刺すので
ある。ボロセウは千人の兵士を意味しており、この術を使って兵士を大勢出し、敵を倒す。
クラバンサユタも数えきれないほどたくさんのムカデを出して敵にばらまき、敵を降参さ
せる。

しかし都市生活においては武器を手にしての闘争の機会がないため、他人の所有物を奪う
ための使用がメインになる。自分の欲しいものを持っている相手を降参させてそれを差し
出させるのだ。このハントゥは人命のトゥンバルを毎年要求するために、飼う者にとって
の難しさがある。

8 srenggara nyarap
これは獰猛な犬のハントゥだ。広い家の番犬、更には家に置いてある財産や宝物の番犬に
適している。入った泥棒は猛犬に怖気づいて逃げ出すだろう。ところが逃げないで犬を追
い払おうとすると、泥棒はスルンガラニャラップに噛み殺される。

9 burung tuhu/burung kholik
静かな夜更けにトゥフトゥフトゥフと鳴く。何度かそれを繰り返し、その合間にホリッホ
リッホリッという鳴き声をはさむ。それを聞くと、ひとは不吉な予兆を感じ取る。その夜
に何か悪いことが起こる徴候だと考えるのである。

ジャワ語のtuhuは「間違いなく何かが実現する」を意味し、kholikは造物主を指している。
ジャワ人はその鳴き声から、造物主が何かを実現させて人間に示そうとしていると解釈す
るようだ。

10 burung gagak
日本人はこの鳥をカラスと呼んでいる。ガガッ鳥は昼間からカオッカオッカオッと鳴く。
ジャワ人はそれを、死ぬ人間が出ることをハントゥが教えていると解釈した。昔この鳥は
墓を足でひっかいて暴き、埋められていた人間の遺体をついばむ姿を見せることがしばし
ばあった。

11 angkup
夜中に聞こえるピョン ピョン ピョンという音がアンクップと呼ばれている。それは生
き物が出している音とされていて、ジャワ人の間で一般的にアンクップと呼ばれているナ
ンカの樹の実が熟すときに出す音とは別ものだ。

この不思議な音に関しても、その界隈に何か良くないことが起こるのを知らせているもの
と解釈するジャワ人が多い。このアンクップの音が聞こえたら、遅かれ早かれどこかで変
死体が見つかるだろうと言われている。

12 gemak melung
鳥の鳴き声のハントゥがこのグマッムルンだ。その鳴き声はだれか人間が怖がり始めるま
で続けられる。そしてだれかが怖がると、鳴き声はますます大きくなる。鳴き声のする木
の上で小鳥が飛び交っていれば、その声がグマッムルンであることに間違いない。

13 codhot ngising
コウモリの姿をしていて、通りかかる人間の近くを矢のように飛んで驚かす。また留まっ
ている木を揺さぶったり、上から糞を落としたりする。そして怖ろし気な声で鳴き、人間
を怖がらせようとする。それでも通行人が怖がる様子を見せないと、コウモリの数が増え
て通行人の周囲を飛び交い、果実を上から落としたりする。[ 続く ]