「ジャワ島妖怪大全(12)」(2023年06月20日)

病気になった者の体内にはナンカの種くらいの大きさのコブができていて、手でそれを潰
すとコブはすぐに別の場所に移動する。病気を治すためには、ドゥグンが棲んでいる場所
から取って来たものをドゥグンに返さなければならない。

2 candhikala
日没時に出現して小さい子供に障りを起こすハントゥがチャンデイコロだ。チャンディコ
ロに障られた子供は熱を出してうわ言を言う。だからジャワ人は日没の前に子供が家に帰
るようにしつける。

チャンディコロはsarap sawanとも呼ばれる。サロップサワンは幼児の大敵だ。幼児には
さまざまなジャムゥが使われるが、その中でも頭頂に塗られるdlingo bengleのまだ欠か
せない子供がサロップサワンのお好みターゲットになる。ドゥリンゴベンレは薬用植物か
ら作る塗り薬でさまざまな薬効があり、また幼児の頭頂部が固まるまでそこを保護するた
めによく使われている。

そんな幼児を家の外に連れ出すとき、しっかり自分の身体に密着させて抱きかかえず、自
分の身体から離して持ち上げるようなことをすると、その子は容易にサロップサワンに憑
りつかれると言われている。

幼児をサロップサワンから守るものは自分の胎盤・血液・つむじ・へその緒などに由来す
る霊力である。そのために、赤児が生まれるとその霊力が活発化するように幟や旗、傘、
バナナの幹に刺したクリスなどを家に飾り、赤児の周囲にはサプリディやはさみなどを魔
除けとして置く。

サロップサワンの障りを受けた幼児は年寄りが一晩中膝に抱きかかえ、夜明けになってか
ら膝からおろして寝かせる。家の外にも、入り口扉の外に白糸を差し渡してバリケードに
し、白黒に塗った竹槍やパイナップルの葉などを置いてサロップサワンが近づかないよう
にする。

3 sengkala
暗黒をもたらす恐怖のラッササがスンコロだ。漆黒の夜に子供が外に出ることをジャワ人
は昔から禁じていた。満月の夜でなければ、子供は外で遊んではならなかった。暗い夜に
は家の扉も窓もしっかりと閉ざされ、家の中に外部の影響が進入することをできるかぎり
防いだ。外部の影響の中にはスンコロがもたらす災厄があったからだ。

厄に見舞われて苦難に陥った者の影にスンコロがいる場合が少なくない。病人やあるいは
苦しみで精魂尽き果てた者の周りにこのハントゥがいるのをしばしば目にする。

人間の心を暗くさせて不安に落とし、落ち着いて生きることを忘れさせてしまうこのハン
トゥはあらゆるものの姿で現れる。イノシシの姿で現れて女性になつき、女性が馴れると
セックスに誘うようなこともする。女性が拒絶するとイノシシは牙で相手を突くのだそう
だ。動物の姿になるときはたいてい牙のある動物になる。

威嚇の対象にした人間には、一瞬だけ姿を見せてからすぐに消える。見ないようにしよう
としてその者が目をつぶると、もっと頻繁に瞬間的示現を行う。その者が眠ると、神秘的
な方法で目を覚まさせる。

スンコロに憑りつかれないようにするには、道路の四辻や不気味な場所に供物を置いて呪
文を唱える。これがその呪文だ。ana sengkala seka lor balia ngalor, kidul balia 
ngidul, kulon balia ngulon, ngetan.

もし憑りつかれたなら、三日三晩tapa kungkungを行って退散させる。開始する日はジャ
ワ暦が示す自分の誕生曜日にしなければならない。それが成功してスンコロが退散したら、
家の周囲にドゥリンゴベンレを植えてスンコロの再来を防ぐのが大切だ。[ 続く ]