「ジャワ島妖怪大全(14)」(2023年06月22日) 村の鎮守であるダニャンへの不敬はダニャンを怒らせて村全体に危難を招くことになりか ねない。そのために村人の間でもしもダニャンの怒りを買うような振舞いをする者がある と、村の総意でその者に制裁が加えられるようになった。掟の中にその面に関わる禁止事 項を定めている村もある。 2 cikal bakal 村の開祖あるいは礎を築いた者の霊魂がチカルバカルであり、それは形を持たず、姿を人 間に見せることもない。だが開祖であるがゆえに、その村に築かれまた発展したあらゆる ものごとと住民を守護すると信じられていて、村が天災人災に襲われるとき、夢の中や共 同体の中になんらかの兆候を示して住民にそれを教えてくれる存在とされている。チカル バカルは村がより良い発展を成し遂げるように力を貸してくれる存在なのだ。婚姻や村全 体の祝祭にチカルバカルを招いて祝福してもらうこともよく行われている。 3 dhemit Ratu Dhemitと敬称で呼ばれることもあるドゥミッはダニャンデサと似たような役割を果 たす。違いはダニャンが村を鎮守するのに対してドゥミッは町を鎮守すること、そしてド ゥミッの方がより強い力を持っていることだ。 ダニャンと同じように、ドゥミッも住民に尊崇されることで鎮守を行なうのであり、住民 が敬意を示さないどころか、忘れ去ってないがしろにするなら、町は悪化の方向に導かれ てしまう。ドゥミッに対する礼拝方法はダニャンにするものとよく似ている。 4 begejil 庭園内にある木々に宿る、庭をテリトリーにするハントゥがブグジルだ。その場所に昔か ら棲んでいたので、そこが庭園になった今もその場所を鎮守している。つまりその場所に とってはブグジルがダニャンの代理人ということになる。 棲んでいる木の近くで供物を捧げて人間が自分への尊崇を示せば、ブグジルは喜ぶ。供物 は毎週木曜の夜に捧げられる。しかし人間がそれを忘れたり怠ったりすると、家の中をひ っくり返したり、あるいは人間の嫌がることをして、家の住人に抗議する。 5 berkasakan ブルカサカンは空き家に宿るドゥミッであり、人間の住んでいない家屋を守護するハント ゥなのである。ところが人間の姿で出現するためにジャワのアニミズム信仰者はブルカサ カンを怖れる。誰もいないはずの廃屋に突然出現するから、人間は驚き、悪くすると病気 になったりする。空き家や廃屋があればまず間違いなくブルカサカンが棲んでいる。だか らその数はたいへん多い。 6 bandhu 森林の中で人間の居住がなされていないエリアを守護しているのがバンドゥだ。不気味な 雰囲気を漂わせている森林にはバンドゥがたくさんいる。入って来た人間を襲って害する ようなことはしないものの、それに出会うと人間のほうが病気になってしまうため、アニ ミズム信仰者にとっての恐怖のタネになっている。 7 mariyem マリユムは人間の姿をした森林に棲むハントゥであり、ドゥミッの一種だ。人間の居住し ていない場所を守護している。人間に関節の痛む熱病をもたらすと考えられていて、アニ ミズム信仰者はたいへん怖れている。マリユム自身が人間の前に現れたがらないことが人 間にとっての大きい救いになっている。[ 続く ]