「ジャワ島妖怪大全(17)」(2023年06月27日)

グロンドンは寂れた道路に鶏を入れた籠の形で出現する。そこを通りかかった者は、良い
拾い物をしたと思って、それを持ち帰ろうとする。すると突然その籠はカッと目を見開い
た巨大な頭になって持ち帰ろうとした者を非難するから、その者はびっくり仰天、半死半
生の状態で逃げ帰る。なんとか家にたどりついたら、そのままベッドに倒れ込んでうわご
とを言い始める。それらの反応は非難されたことの結果ではない。グロンドンの人間界へ
の復讐はそんな形を取る。

30 Roro Wudu
Ratu Lara Kidul, Nyahi Gede Segara Kidulなどの別名を持つロロ・ウドゥはパジャジャ
ラン王国のプラブ・ムンディン・ワギの美しい娘だ。父王の命じる結婚を拒否したために
この王女は呪われて、ジャワ島南海岸部のクンバン山地に捨てられた。

かの女はそこで病気になり、悪霊たちに命じて自分を海底に捨てさせた。肉体は死に、霊
魂は南海の女王になった。そして海底に王宮を建て、海岸を守護するハントゥたちに王宮
の維持と運営を行わせた。

かの女は若い娘の肉体を持ち、一糸まとわぬ姿でその豊満で美しい肉体の美を誇る女王と
して描かれる。衣服を着ないのは、自分の価値を誇示するためなのだ。

ところが、人間はニャイロロキドゥルを目にすることができない。もしも偶然目にしてし
まうと重い病気にかかり、女王との契約を迫られる。そのまま死ぬか、死ぬのがいやなら
病気を治して大金持ちになるか。しかし大金持ちになって栄華にふけったあと、死んだら
南海の王宮で女王の使用人にならなければならない。

パランウエダンの洞窟で眠ると、夢で女王に会うことができる。夢の中で女王は、女王に
会いに来た者の頼み事に耳を傾け、忠告や助言を与えるのである。

31 kumbalageni
クンボログニはラトゥキドゥルのお気に入りハントゥだ。ラトゥキドゥルと契約を交わし
た者が死ぬと、必ずクンボログニがやってきて契約を果たすように迫る。だから相手を甘
く見て契約した者にとって、クンボログニはうるさい相手になるのである。

32 net-net
生きているとき哀れな人生を送り、死後も魂の平安が見いだせないでいる女性のハントゥ
で、白猫の姿をしている。人間がその白猫に近寄って行くと身体がだんだん大きくなり、
最後に人間の身体に変わってしまう。人間に悪さをしたり害を与えようとするわけではな
いが、目の前で猫が人間に変わるとたいていだれでもびっくり仰天するだろう。この猫は
ネッネッという声で鳴く。

33 harun
昔ハルンという名のアラブ人の大富豪がいた。亡くなったとき、遺体はチルボンから近い
コロムン山に埋葬されたという話だ。ハルンのハントゥは交信してきた人間や供物を捧げ
た人間を金持ちにしてくれる。供物は、香を焚き、花を捧げ、ハルンのことを強く念じる
のだそうだ。すると大金持ちになれる。だがそれだけでは済まない。死んだあとは霊魂に
なってハルンに仕えなければならない。死んだあと召使になって相手に仕えることをジャ
ワ語でngarunと言う。

34 dokan
あまりにも吝嗇で物惜しみする人生を送り、善行としての寄付など一度もしたことのない
者が、死んでから自分の人生を後悔してドカンという名のハントゥになった。夜中に人間
界をさまよい、自分のようなケチ人間を見つけると恨めしそうな姿を現わしてじっとたた
ずむ。[ 続く ]