「クリピッとクルプッ(1)」(2023年08月24日)

インドネシア人も揚げせんべいやチップスが大好きで、工業団地内の工場の事務所でロー
カル従業員たちがおやつ時になると引き出しから何やら取り出してコンピュータの前でボ
リボリやり始める姿はかつて日常の光景になっていた。もちろん都心部の高級オフィスビ
ル内の事務所では見られないものだ。あの光景は今でも続いているのだろうか?

インドネシアのその種のおやつは伝統的なものだけでもたいへん豊富な種類がある。きわ
めて大ざっぱに言うと、keripikがチップスに該当し、kerupukは揚げせんべいということ
になるのだろうが、もっと本質的なちがいをこれから見ていきたいと思う。


わたしがまだインドネシアビギナーのころはクリピッよりもクルプッのほうが圧倒的にポ
ピュラーだったような印象があるものの、時代が変わった今ではほぼ拮抗状態になってい
るように見える。あのころわたしが驚かされたことのひとつが、せんべいが食事の皿に米
の飯と一緒に載って出てくることだった。せんべいというのは間食という固定観念にしば
られていたわたしは、数十年という長期間にわたって米の飯とクルプッを一緒に食べるこ
とができず、クルプッをデザート代わりにしていた。インドネシア人は、食事の皿にクル
プッやクリピッが添えられていないと、欠けたものがある不完全な食事という気分になる
そうだ。

インドネシア人はさまざまな味覚を口の中でごちゃ混ぜにして楽しむ民族であるというイ
ンドネシア人自身の分析をしばらく前に読んで、さすがはビンネカトゥンガルイカの国民
だと感心させられた。五味や旨味と硬軟の食感などが口の中で入り混じるのに快感を抱く
民族がかれらだったのだ。道理で米の飯とクルプッが一緒に食べられるわけだ。いや、か
れらは更に、白飯とミーゴレンやビーフンゴレンをもおかずにして一緒に食べている。


クルプッは種類によって形・サイズ・香り・味・厚み・クリスピーさなどにバリエーショ
ンがある。クリピッとの比較については、伝統的にクルプッがメインストリームを成して
いたためにクリピッがクルプッの亜種であるような印象が世の中にあり、クリピッをクル
プッと呼ぶひとも少なくない。

インドネシア政府食品薬品監督庁加工食品標準化局によれば、クリピッは芋や果実を薄く
そいで揚げたもの、あるいは野菜に粉をまぶして揚げたものが一般的であり、一方のクル
プッは、タピオカ・小麦・サゴ・芋などの粉で作ったドウに果実・芋・野菜・エビ・魚な
どを練り込み、蒸してから薄くそいだものを乾燥させ、食べる前に油で揚げるのが普通で
あるという説明になっている。


クルプッに練り込まれるのはたいてい独特の味や香りを持つ食材であり、エビ・さわら・
ニンニク・キャッサバなどがよく使われる。また油で揚げたときに膨張してクリスピーさ
が得られるよう、スターチが重要な役割を担っている。

クルプッはたいてい揚げる前の薄く硬い状態で販売されている。インドネシア語でそれは
生クルプッkerupuk mentahと呼ばれる。パサルで生クルプッを買ってきて、食事を用意す
るときに台所で鍋に油を入れ、熱くなった油にそれを入れて膨れさせるのである。ところ
が種類によっては膨れさせるのに手間がかかるものもある。皮や魚のクルプッは、なかな
か容易に膨らんでくれないために、まず低温で一回揚げてから熱い油で膨らませるという
二段構えが必要になる。このように手間がかかるものはきっと、生で販売してもあまり売
れ行きが良くないのだろう。だから生ではあまり売られておらず、たいていすぐに食べら
れる状態で販売されている。

旨味やクリスピー感を与えるために、クリピッにもスパイスを混ぜたドウが使われること
もある。またクリピッの中には、油で揚げずに乾燥させるだけのものもある。クリピッに
加工されると元の素材の含有水分が大幅に低下するので、長期保存が可能になる。
[ 続く ]