「クリピッとクルプッ(11)」(2023年09月07日)

ブリニュ市内で魚肉クルプッを製造販売しているBong Tung Pinは1900年ごろからこ
の事業を始め、代々の子孫が家業を継いできた。別の華人プラナカン事業者のひとりも、
何百年も前からこの家業が続いていると語っている。かれらの中にはクルプッとペンペッ
とオタコタッを一連の製品レンジにして作っている家が少なくない。生産者の中に華人系
プラナカン家庭が多い点について、最初バンカに渡って来て事業を始めた祖先たちが、地
元のムラユ人よりも器用に味付けや加工を行うことができたからだとかれらはその背景を
説明している。

魚肉クルプッの製法はまず、さわらの魚肉を骨から外してすり身にする。小骨もすべて取
らなければならない。すり身を成形するために卵黄が加えられて手で練る作業が行われる
のだが、そのときに氷塊が加えられて脂肪分を抜き出すのだそうだ。このすり身の練り上
げ作業の中で、取り残された小骨も一切抜き取られる。

それに塩・ニンニク・調味料・ココナツミルクが加えられてからタピオカ粉がかなりの量
混ぜられてドウが作られる。ドウはすべてが均一にならされていなければならない。
続いてドウの成形作業に入る。円形や方形の薄板、あるいは絞り出してクルプッミーの形
に作り、それを一度茹でてから乾燥させる。乾燥させただけの生クルプッの状態でも販売
されるが、すぐ食べられる状態に調理したものも販売される。ただし方形の薄板状のもの
はあまり生クルプッで販売されていない。

方形のものの調理方法は油で揚げずに火で焙って膨らませる。そのときに直火が当たらな
いようにするそうだ。熾火の上に網を置いてせんべいを焼く風景は日本の昔にもあったよ
うな気がする。バンカではその火あぶりのせんべいがクンプランと呼ばれていて、クンプ
ランはたいてい調理済みのものが販売されている。円形やミー状のものは油で揚げるのが
普通だ。


ちなみにブリニュのさわら魚加工食品のラインナップにつながるオタコタッやペンペッも
似たような作り方になっている。オタコタッも最初のすり身を作る作業はクルプッと同一
だ。しかしドウを作るときに混ぜ込まれるタピオカ粉の量が大きく違っている。生産者の
中にはタピオカ粉の代わりにサゴ粉を使うところもある。粉が違うと噛み心地に差が出て
来る。

そのドウをちぎって5から10センチ長の少しつぶれた円筒形にし、バナナ葉で包む。そ
れを熾火の上に網を置いて焼く。焼き加減は調理人のお好み次第。たいてい10分から1
5分くらい焼いている。値段はバナナ葉の中身のサイズが大きいほど高くなる。


ペンペッの作り方も最初はオタコタッと同じ。味付けは塩とニンニクだけで、ココナツミ
ルクは使わない。タピオカ粉はオタコタッよりも量が増える。それを円筒状に成形して茹
でるとペンペッになる。普通はその状態で食材として販売されていて、それにサゴ粉をま
ぶしてラップで密封すると5日くらい日持ちする。

それを買ってきて、家で茹で直したり、油で揚げたり、オタコタッのように熾火で焼いて
食べている。また調理済み食品として販売されているものも上の三種類の調理法が使われ
ていて、客が自分の食べたいものを食べさせてくれるようになっている。調理方法がどれ
であろうと、名前が変わることはないようだ。

ペンペッのサイズはオタコタッよりも小さいのが普通であるものの、pempek kapal selam
潜水艦ペンペッのように大型のものがないわけでもない。[ 続く ]