「クリピッとクルプッ(13)」(2023年09月11日)

ある店では、店の裏に作業場があって、そこでトラの爪をはじめ種々のアンプランが作ら
れている。そこに雇われている10人の作業員はすべて女性だった。すり身作り、フライ
作業、成形、包装などの工程が分業で行われており、作業員への報酬はそれぞれの工程で
違っている。成形係はキロ当たり6百ルピア、フライ係はキロ当たり5百ルピア。中には
工程の一部を機械化した生産者もいる。特にトラの爪の成形は機械化している生産者が多
い。また包装作業も機械化しやすいようだ。生産者のブランドが印刷されたプラ袋に製品
が詰められていくのである。

その店の売り上げは、店主によれば一日百万ルピア前後だった。しかしルバランシーズン
ともなると売上は一日6百万ルピアに達する。トラの爪もルピア集めに大車輪の働きをし
ているのだ。


もしもクルプッが日本のせんべいに該当しているのなら、コメを素材にするものがあって
もよいはずだ。米どころのジャワ島で米を素材にするせんべいがないはずがない。そう思
って調べたところ、やはり米のせんべいがあった。その名をopakと言う。しかしクルプッ
が粉でドウを作るという定義であるなら、オパッはその定義に則さない。スンダ地方スカ
ブミが発祥のオパッというものはこんな作り方になっている。

まずモチ米を炊く。炊き上がった粒々のモチ米をつぶして、いわゆるモチ状にし、ヤシの
果肉フレークと卵を混ぜる。モチ米1キロに対してヤシの実2個分の果肉フレーク、卵は
モチ米3キロに対して1個。

それを薄板に成形する。大きさはお好み次第。それを天日干しして乾燥させる。もしも日
照の具合がよくなければ、閉め切った室内で炭火を焚いて乾燥させてもよい。乾燥した生
オパッは熾火の上に網を置いて焙る。普通はほんの1〜2秒で黄色い色が茶色っぽくなり、
調理済みの状態になる。

ただし天日干し乾燥させたものはクリスピー感が圧倒的に高いため、乾季に作られたもの
はおいしい。一方、雨季の室内乾燥では天日干し乾燥ほどの効果が得られず、必然的に雨
季の製品は歯ごたえのよくない感触がおいしさを低下させることになる。


西ジャワ州スムダン県チョンゲアン郡は米せんべいオパッを郡の産業の柱に育てている。
タンポマス山の北東山麓に位置するチョンゲアンはバンドン市からおよそ70キロ、スム
ダン市からは25キロほど離れている。その一帯は失業率がきわめて低く、仕事を求めて
都市部に向かうアーバナイゼーションも起こっていないので、村が寂れる心配はまったく
ないと地元民は語っている。オパッは最初、チョンゲアン郡チョンゲアン村の伝統食品だ
った。このエピソードは2006年2月のコンパス紙記事をソースにしている。

元々チョンゲアン村では米せんべいオパッが祭りのために供される食べ物として作られて
いた。商品として作る者はだれもおらず、各家庭が世の中の祭日や自分の家庭での祝祭の
ために作っていたのだ。どこにも販売されていない品物だから、祭りにオパッを用意しよ
うと思ったら自分で作る以外に方法がなかった。

「わたしが子供のころ、オパッは家のオパッしか食べたことがなかったんですよ。わが家
の食べ物という印象でした。だれかから買う機会もほとんどありませんでした。どこにも
売られていないんだから、欲しいと思ったら自分で作るしか仕方がないんです。」47歳
の主婦、ウイスさんはそう語る。かの女は3年前からオパッ生産を開始した生産者のひと
りだ。

チョンゲアン村でオパッの商業生産を最初に行ったのはマアナさんだった。既に故人とな
ったマアナは1990年代初期に商品としてのオパッ生産を開始した。その事業は今も故
人の家族が継続させている。[ 続く ]