「クリピッとクルプッ(17)」(2023年09月15日)

このようにしてクズウコンのインドネシア語名称が生まれ、それが地名になったという経
緯を県名の由来としてガルッ県庁が物語っている。だからガルッ県はクズウコンが自生し
ている土地であり、当然たくさん穫れるからそれにちなんで地名が付けられたという解釈
も可能ではあるものの、ガルッという言葉自体は元々クズウコンを指してはいなかったの
だ。あの場にオランダ人が登場しなければ、クズウコンのインドネシア語名称はガルッに
なっていなかったかもしれないではないか。


その西ジャワ州ガルッ県の県庁所在地であるガルッの町から中部ジャワ州を越えて4百キ
ロも離れている東ジャワのボジョヌゴロ県ガスム郡スンダンレジョ村では、農民たちがせ
っせとクズウコンのクリピッkeripik garutを生産している。

この村もジャワで一般的な米作農民の村だ。稲作をはじめ、他の食用作物もいろいろ栽培
しているのだが、乾季になると仕事があまりなくなってしまう。1997年まで、毎年農
閑期には大きな落差で村の生産活動がダウンしていた。1997年は経済危機が起こった
年だ。

ジャワ島の農村部中下流層にはたいして経済危機の影響が現れなかったものの、それでも
上流層は影響を蒙った。そんな環境下に、自然に生えている食べられる植物をどのように
して食べるかというアイデアが各地で湧きおこった。ボジョヌゴロの町でもおやつのアイ
デアコンテストが開催され、そのコンテストでマディウンに住む軍人の奥さんがクリピッ
ガルッを紹介したのである。

スンダンレジョ村の農村主婦組合がそのアイデアを取り上げた。ガルッは村のあちこちに
自生していて、無料で簡単に手に入る。それをクリピッに加工して販売すれば農閑期の窮
乏生活とはさようならだ。

その実践が開始され、農業指導員からのアドバイスなどをもらいながら、品質向上に努め
た。雨季の終わりごろに木が十分に成熟しているものの根を使うこと。円錐状になってい
るものを使うこと。痩せているものや色がくすんでいるものは使わないこと。

作り方は、まず芋をきれいに洗ってからニンニクと塩を混ぜた水で茹でる。それを一定の
形とサイズに切り、天日干しする。その乾燥プロセスでカリカリにさせなければならない
ため、天日干しは2回行われるそうだ。


スンダンレジョ村でその事業が開始され、経済効果が高まったのを目の当たりにした他の
村々がその先例に追随するようになった。2006年にはガスム郡内にクリピッガルッを
生産するユニットが7百を超えるまでに拡大している、とその年のコンパス紙記事は物語
っている。

その年の生産状況については、生産家庭一軒当たり一日2〜4キロの製品が作られている
のだそうだ。1キロの製品を作るのに材料のガルッは5キロ使われる。素材のガルッは市
場でキロ1千1百ルピアで販売されている。生産者は製品をキロ当たり1万2千ルピアで
納入し、市場ではキロ当たり1万3千ルピアで小売販売されている。

スラバヤ・ガンジュッ・クディリなどの町々の土産物屋で販売されているクリピッガルッ
はたいていがガスム郡の村々で生産されたものだ。しかし販売が好調に進展する一方で、
新たな悩みが生産者の側に出現して来た。生活環境内のあちこちで無尽蔵に得られていた
ガルッが姿を消し始めたのである。原料不足を補うために、チュプからガルッを取り寄せ
るようになっていると生産者のひとりは語っている。[ 続く ]