「中国製品はなぜ廉い?(4)」(2023年09月21日)

「廉価な中国製品が国内に輸入されており、国内産業は競争力を失って圧迫されている。
特に国内市場向け製造会社は輸出向け企業よりも資本力が弱く、国内市場で直接バッティ
ングするだけに大きい影響を蒙っている。製靴産業よりも繊維産業のほうが特に厳しい状
況だ。」とリスタディ、ヌサンタラ労組同盟総裁が語った。総裁は続けて政府への提言を
繰り返した。「この輸入品の攻勢をわれわれはもう何十年も前から警告して来た。政府は
違法輸入を撲滅しなければならない。だがそれだけでは済まないだろう。自由化傾向を持
たせた通商協定がブームになり、国内産業を脅かす輸入品が国内市場で有利になっている。
中でも顕著なのが、中国製の廉価商品が国内市場を席捲している状況だ。値段は驚くほど
廉く、そして品質も国産品とたいして違わない。国内生産者は存亡の危機に立たされてい
る。」


インドネシアの伝統産業であるバティック業界も廉価な中国産綿布を使わざるを得ない状
況に陥っている。国産品はメーター3万ルピアを切ることができないというのに、中国製
は1.5万ルピアで手に入る。いったいどのようなコスト計算をしてそのような廉価な値
付けができるのか、中国人がしていることはまるで理解に苦しむと業界者自身が語ってい
るのだ。

かつてプカロガンのバティック業界に綿布を納めていた生産者は、製造事業が立ち行かな
くなって中国産綿布の輸入販売に切り替えた。今やその生産者はプカロガンのバティック
業界のための材料調達業者に成り代わってしまったのである。バティック生産者も市場の
法則に従ってそうせざるを得ない。必要とされる品質が満たされているかぎり、価格のよ
り廉いものを使うのが当然の論理なのだから。

製造産業が崩壊すれば、多数の国民の雇用を実現させている企業で解雇が起こり、失業率
が上昇する。国民の貧困化が強まり、多くの消費者が廉価輸入品しか買うことのできない
状態に追いやられる。その悪循環を生む製造産業の後退や縮小は避けなければならない。
「繊維産業については、われわれはもう何十年も前からそう主張してきた。」リスタディ
総裁はそう述べている。


そこでは、国内製造産業が持っている能率の悪さと保護主義的な賃金制度も製品競争力の
強さ弱さに影響を及ぼすファクターとして関りを持っている。総裁は言う。

「賃金問題について言うなら、インドネシアの事業主は間違った理解をしている。行政の
定める最低賃金が最高賃金にされ、従業員の賃金を毎年更新される最低賃金に合わせるこ
とで法の順守を行っている。新入社員も経歴数十年の老練社員も同じ賃金だ。昇給とは最
低賃金の上昇のことであり、最低賃金はインフレ率と連動させられているから、勤労者の
実質的所得上昇は起こらない。インドネシアの勤労者の生産性が低い原因の中にその問題
がきっと含まれているとわたしは考えている。」

「中国製品が廉い理由を調べたところ、賃金の要素だけでなくてコストの効率がはるかに
よいことがわかった。サービス・インセンティブ・エネルギーコスト・インフラのどれを
とっても効率が良く、それが製品コストに影響を与えている。

中国の勤労者の生産性は高い。たとえば靴の製造工場で中国の勤労者はある単位時間に
1.5から2足の靴を生産するが、インドネシアでその同じ長さの時間に勤労者が生産す
るのはせいぜい1足だ。しかも中国の勤労者がその時間に靴を1足作ろうが2足作ろうが、
かれの得る賃金は何も変わらない。報酬が変わらないのにたくさん作ろうとするのは、勤
労者の姿勢や労働環境が影響しているものと考えられる。」[ 続く ]