「中国製品はなぜ廉い?(5)」(2023年09月22日)

「インドネシアのある企業で、中国人勤労者にローカル勤労者より高い賃金を会社が払っ
ているという訴えが労組に出された。その実態を調査したところ、ひとりの中国人に与え
られる仕事量がローカル勤労者のふたり分になっていた。それほど効率の違いがあるのだ。

たとえばローカル勤労者を1チーム10人で仕事させると、7人がマンドル(作業監督者)
になる。わたしが視察に訪れた工場では、建物建設のレンガ積みの速さがまったく違って
いた。中国人勤労者のやり方がローカル勤労者のとは違っているのだ。

政府はインドネシア人勤労者の生産性向上のために、現在の賃金制度を特にその面に焦点
を当てて改善しなければならない。同時に生産性を向上させるための職業訓練を行って勤
労者の質的改善をも図らなければならない。

昨今のインドネシア人勤労者に新たなトレンドが見受けられる。かれらの多くは3ヵ月程
度しか勤労意欲が続かない。働いてもすぐに疲れるし、ちょっと疲れたら簡単に病気にな
る。一日一生懸命働かせたら、翌日は病欠だ。1990〜2000年世代の生産性に遠く
及ばない。」


総裁はインドネシア人勤労者の労働生産性が底抜けの低下を起こし始めている予兆を嗅ぎ
つけたようだ。労組同盟総裁の上の話には、どうして中国産品がそれほど廉価なのかとい
う命題に関する具体的な解説があまり見られなかった。その点に関しては、2022年9
月に出たSINDOニュースの記事のほうが参考になるように思われる。その記事の論旨はこ
うなっていた。

どうして中国の製品はそれほど低価格で販売できるのか?結論を簡単に言うなら、それは
中国政府の産業政策の結果であり、特に輸出政策の効果がそこに表れているからだ。中国
は新商業主義国家としてダンピングを国策にした。それは資本移動を制限するという目的
の中に組み込まれた、輸出を増やして輸入を上回るようにするためのひとつの方針なので
ある。

製品を外国に輸出する生産者は輸出価格を国内市場価格や生産コストより低い価格にして
ダンピングを行う。それが行われると、その物品の外国にある市場が破壊され、競合価格
帯よりずっと低いレベルで市場価格の付けられた中国製品が外国のその市場を奪う結果に
至る。


世界最大の人口を抱える中国の労働力は無尽蔵と言ってよいくらいのものであり、貧困ラ
イン下の人口が10億人ともなれば、それも世界最大規模だろう。だから中国では労働力
がきわめて廉価に賄われている。生産工程を機械化した工場はそうでない工場よりもっと
低廉なコストをエンジョイしており、おまけに失業率を高めていると見られている。

中国で唯一の公的労組連合である中華全国総工会は闘争的な企業労組を非順法的と位置付
けていて、労働者、つまりは企業労組、が行う企業相手の闘争活動を勧めていない。その
状況に抗議する労働者は簡単に解雇され、また虐待される。それが原因で自殺する労働者
も少なくない。法規には労働者を重視し保護する内容が謳われているにもかかわらず、保
証も補償も与えられることがなく、法規の内容に即した実践はなされたことがない。


中国は製造された物品に付加価値税を課しているが、輸出がなされると付加価値税は還付
される。中国は環境汚染を問題にしておらず、世界トップクラスの汚染国と言われている。

工場が汚染対策費用の支出から免れているなら、工場損益を黒字にするための売上も小さ
くできるはずだ。もしも国が環境汚染対策を行っていないのなら、そのための費用を税金
として産業界から取り立てることもなくなるにちがいない。

なるほど、労組同盟総裁が強調していた「効率の良さ」ということの主旨はそんな内容だ
ったのか。ということで果たして読者の皆さんの腑に落ちただろうか。[ 続く ]