「クリピッとクルプッ(21)」(2023年09月21日)

もちろんギンギラギンに赤くないカルプアッサンジャイも売られている。カルプアッサン
ジャイというのは普通、油で揚げた直後のまだ特定の味がつけられていないものを指して
いる。味付けはたいていトウガラシ辣味、素朴な塩味、グラメラなどを使った甘味の三種
類になっている。その塩味のものはkarupuak sanjai tawarと呼ばれているから、タワル
という言葉に騙されてはいけない。辣味のものはkarupuak sanjai balado、甘味を付けた
ものはkarupuak sanjai manisという呼称で区別される。

バラドというのは料理の世界でよく耳にする言葉だ。たいていトウガラシがたっぷりと加
えられて真っ赤になっている。ミナンカバウ語のバラドはインドネシア語でberladaを意
味しているのだが、ミナンカバウ人はトウガラシをladoと言うのである。つまりladoはイ
ンドネシア語ladaが訛った単語であり、ラダとはコショウのことだ、と考えている方はミ
ナンカバウで足元をすくわれる可能性が高いのでご用心。ミナンカバウ人はトウガラシを
ラド、コショウをマリチャmaricaと呼んでいるそうだから、お気を付けください。


ブキッティンギ市マンディアギンコトスラヤンの道路沿いにはカルプアッサンジャイの店
が並び、店の裏にカルプアッ製造作業所があって毎日キャッサバの薄片やスティックを揚
げる香りが空中に充満している。その地区で製造販売をしている30軒ほどの中のひとつ、
カルプアッサンジャイアマッハジの店をコンパス紙記者が取材に訪れた。

店の裏手にある厨房では、アルマディアニスさん29歳が油を満たした巨大な金属鍋でキ
ャッサバの薄片を揚げていた。かれの両腕は長さ1メートルを超える、まるでスコップの
ような穴あき掬い棒をしっかり握って鍋の中を操作している。かれはここでもう13年も
この仕事を続けているのだ。

厨房の中は大きな炉が広い場所を占め、炉の上では四つの大型鍋が油を沸騰させている。
白かったキャッサバの薄片が色づいてくると、アルマディアニスはそれを掬い取って金属
製の大きな油落としに移す。その油落としは5キロ分のクリピッを収容できる。

一方の隅では数人の女性が油の落とされたクリピッを大型プラ袋に詰めている。米袋の二
倍くらいありそうなサイズだ。この厨房にあるものは巨大なものばかりだ。一般家庭にあ
るようなサイズの道具は見当たらない。

クリピッは均一に揚がっていて、しかも完璧に元の姿を保っている。油揚げ工程の中で割
れたり欠けたりしたものはひとつもない。「うちではGadut産のシンコンを使っているか
ら、そういう不具合が出ないんですよ。」この店のマネージャーであるロニさん25歳が
そう説明した。ガドゥッは西スマトラでトップクラスのキャッサバ生産地だ。

記者は勧められて油が落ちたばかりのクリピッサンジャイをつまんでみた。まだ温かく、
しかしクリスピーな歯ごたえと、そして砕けたシンコンの旨味が口の中に広がった。ひと
つ食べると次の一個が欲しくなった。


この厨房では毎日7〜8百キロのクリピッシンコンが生産されている。まず、キャッサバ
の皮をむいてさまざまな形に切る。長短のスティック、円板や楕円形、キューブなど形状
はさまざまだ。昔はまな板に置いて包丁で切っていたが、2000年になる前に機械化さ
れた。手で切っていたころは膝にジーンズのような厚手の布を当てて、怪我をしないよう
な対策が取られていたそうだ。

揚げあがったクリピッには味が付けられる。ギンギラギンに赤いのはサンバルがまぶせら
れるからだ。サンバルはトウガラシ・ヤシ砂糖・イチゴ・ニンニク・白砂糖を混ぜて作る。
砂糖味や塩味のクリピッも作られる。

出来上がった製品はほとんどがブキッティンギのパサルに送られるが、表が大通り沿いの
店なのだから、もちろん店に買いに来る人も多い。店に買いに来るひとの中には、他の町
で土産物店を営んでいるひとがたくさん混じっている。ところがそんなひとたちは、売場
に置いてある製品を買わず、味が付けられる前の状態のものを大量に買っていく。持ち帰
って自家製サンバルを塗り、それを客に売るのである。[ 続く ]