「クリピッとクルプッ(22)」(2023年09月22日)

カルプアッサンジャイアマッハジの常連客は他の町々の土産物店だけでなく、メダンやジ
ャカルタからも仕入れにやってくる。そればかりか、マレーシアからの常連客もたくさん
いるとアルマディアニスは語っている。

ここで作られているキューブ形のクリピッは地元の主婦が買いに来る。ミナンカバウ名物
である肉のルンダンに混ぜるのだそうだ。自宅で主婦がルンダンを作るとき、あるいは食
堂でルンダンが作られるとき、キューブ形のクリピッは手ごろな増量効果をもたらしてく
れるようだ。


やはり同じ地区にあるトコウニヤッも同業者だ。この店の厨房は道路に面していて、通行
人によりたくさんの香りをプレゼントしてくれる。この店は一日の生産量が5百キロ。と
ころがルバランシーズンになると倍増して1トンに達するのだが、面白いことに、ルバラ
ンシーズンには売れるものがシフトする。キンチョランダンと呼ばれるキューブ形のクリ
ピッが8百キロを占めるのである。なんと、毎日それが続くという話に驚かされる。ルバ
ランシーズンにミナン人がいかにルンダンをたくさん作るかということをそれが示してい
るようだ。

この店にはオーソドックスなカルプアッサンジャイの辣塩甘の三役とは異なる、黄金のよ
うに黄色いカルプアッが置かれている。ウコンを含んだブンブが塗られたユニークなその
クリピッはバソやミーを食べるときの副食としてぴったりだと店主のヌルマンさん57歳
が語った。激辛好みの消費者のためにラドのブンブが塗られたものもお勧め品として置か
れている。真っ赤なブンブが塗られたその表面には凄まじいことに、トウガラシのかけら
がこれ見よがしにへばりついている。

ヌルマンはカルプアッサンジャイの奥義について、素材のキャッサバが決め手だと語る。
この地区のカルプアッサンジャイ生産者はたいていがガドゥッ産のものを使っている。や
わらかくて、しかも揚げるときに欠けない。
「高品質のカルプアッサンジャイを作るために、わたしゃ自分でシンコン畑へ見に行きま
す。畑の中央に生えているやつを一本引き抜いて見るんですよ。畑の真ん中というのは、
その一帯に生えているやつらの間で栄養を奪い合う場所なんです。そういう場所で育った
やつが素晴らしい出来なら、わたしゃその畑でできたシンコンを全部買い取ります。畑の
端のほうへ行けば行くほど、栄養の奪い合いは低下するでしょうから。」


ヌルマンはクリピッを揚げる作業をいまだに自分で行っている。揚げ加減を自分の理想と
思うものにするためだ。かれは無駄を嫌う。仕入れたシンコンの皮むきがなされたあと、
皮は家畜飼料として売り払っている。

カルプアッサンジャイの製造販売がいつからこの地区でこれほどの活況を呈しはじめたの
か、はっきりしたことは分からない。1970年代から80年代にかけて製造販売する店
がいくつかできていたことをヌルマンは覚えている。それがついにはミナンカバウ最大の
生産センターに育ったのである。

ミナンの地を訪れたなら、おみやげの選択は多々あるだろうが、真っ赤に塗られた辣味満
点のクリピッサンジャイバラドも決してミナンカバウ土産の名をはずかしめないものにな
ることだろう。[ 続く ]