「中国製品はなぜ廉い?(終)」(2023年09月27日)

古くから見られる例のひとつが木材製品。廉価に入手されたインドネシア産木材が中国で
加工され、その製品がインドネシア市場に出回る。国産品よりはるかに廉い市場価格で販
売されるために、インドネシアの生産者は自国の材料を使っているというのに競合できず
に敗退する。

不法伐採された木材のコストはどれくらいになるのだろうか?現物自体のコストは盗むの
だからゼロであり、伐採作業費は低経済生活をしている地元民に日当を与えるだけでよく、
あとはせいぜい輸送費ということになりそうだ。それに加えて森林監視員や港湾監視機構
への目隠し料で出費が終わるなら、その不法行為によって木材のコストは合法伐採された
ものの何割まで低下するだろうか?

不法伐採させて木材を大量に手に入れようとする人間がいなければ大規模不法伐採が起こ
る可能性はミニマイズされるという論も世には存在しているのだが、不法伐採摘発で検挙
されるのはイ_ア人実行者ばかりで、国境を越えた悪の同盟はまたすぐに誰かが作り上げ
てしまう。

別の例はココナツヤシの殻の繊維だ。今でこそヤシの実の殻は廃物利用が進んできたが、
昔はほとんどが捨てられていた。ゴミをだれかが少額であれ買ってくれるのなら、そんな
に有難いことはない。で、大量のヤシ殻の繊維を中国人が超廉価に買い取ってマナドから
船積みさせた。それを使って中国で肥料が生産され、それがまたインドネシアに舞い戻っ
て来た。激安の肥料はインドネシア市場で飛ぶように売れたそうだ。


中国は輸出に導かれた経済成長を大方針のひとつにしている。輸出振興をサポートするた
めに1988年以来、政府は製造プロセス内で発生した付加価値税と消費税を、製品を輸
出する生産者に対して還付するタックスリベートシステムを実施している。

ある経済学者によれば、輸出が10%上昇すればGDPが1%上昇するとのことだ。19
90年から2001年まで、中国の輸出の伸びはGDPを16%近く上昇させたという分
析がなされている。

廉価中国産品の洪水はインドネシアだけでなく世界中の国々をびしょ濡れにしている。ヨ
ーロッパもアメリカも違いはない。先進国はびしょ濡れを減らそうとしてさまざまな対策
を講じている。米国は去る2004年3月に中国産繊維製品を輸入クオータ制対象品目に
指定した。そればかりか恥も外聞もかなぐり捨てて、中国元の通貨交換レート引き上げを
行って低価格の威力を弱めるのに努めている。


インドネシアでは、輸出入活動が法規通り運営されるなら、市場に溢れかえっている中国
産品の洪水も弱まるだろう。しかし、大概が法規通りに運営されている欧米先進国さえも
が、洪水の勢いを弱めるのに大わらわの態のように見える。であるなら、異常な低価格と
不法輸出入行為の間にそれほど深い直接的な因果関係はないのかもしれない。

異常な廉さは品質の心配を抱かせる。ありとあらゆるプロセスがコスト効率よく行われて
いるなら、品質管理上の最終製品検査で不良品がはじかれない方が効率はアップするだろ
う。そうなれば飲食品は生命にかかわる問題になりかねない。インドネシアでそれが顕在
化したことにウィボウォ氏は言及した。

最近(2004年)、廉価な中国産粉ミルクが原因で数十人の赤ちゃんが死亡した事件が
インドネシアで起こった。飲食品製造のために不可欠な標準を満たすためのケアをコスト
効率が否定してしまえば、廉価商品を作っている生産者が消費者の生命を保障する理屈も
なくなる可能性が高い。

国内向けはケアするが輸出向けの特別ロットはケアしない、というのも怖ろしいビジネス
魂だ。その数十人の赤児の生命を奪った「廉かろう怖かろう」の粉ミルク生産者はどうな
ったのだろうか?[ 完 ]