「インドネシア文化理解(11)」(2023年11月06日) (∫)インドネシア人は平静な感情を維持することに強い。そしてまた、インドネシア人は 威厳や見映えを良くすることも大切にする。威厳の中に見せかけの自尊心が暗示されてい る。 (∫)ジャワ人は感情をおもてに表さず、自分が何を感じたかを語ることもめったにしない。 (∫)人間は常に平静を保ち、あらゆることがらにおいて自分がそれと調和を保っている姿 や態度を示さなければならない。完璧に自己をコントロールし、いつも優雅で上品に振る 舞わなければならない。それがジャワ人の理想的人格を物語る哲学である。ジャワ人は謙 譲や自己卑下を好む。 (∫)ジャワ人は顕示的な強い感情表現をしない。心から打ち解け合える親友も少ない。恋 愛関係も同様だ。ジャワ女性は男性よりもよくしゃべり、にぎやかだ。女性は表情豊かで、 ほとんど一日中しゃべり、よくふざける。しかしその終日のおしゃべりは男性の沈黙とほ とんど同じ機能を果たしているように見える。つまり周囲の人間との間に距離を置くため のものなのだ。 ジャワ人の動きはまるで踊りのように均衡が取れていて、柔軟だ。全身のすみずみまでコ ントロールが行き届いているように見える。静かで落ち着いてコントロールの効いたかれ らの姿勢はリラックスしているのでなく、異変に備えているのである。突然起こるかもし れない変事に対する、絶えざる警戒なのだ。 オープンな喧嘩はめったに起こらない。怒って大声で怒鳴ったり取っ組み合いしたりする ようなことはない。しかし喧嘩のない世界はこの世にない。ジャワ人はコンフリクトを公 にせず、直接的な非難や攻撃の代わりに皮肉・嫌味・ほのめかし・無視・そこはかとない 蔑みなどを使う。対立があからさまな段階に達したら、完全に関係を絶つ。 ジャワでアルコール飲料は容易に手に入るし、また社会も許容的だが、酒好きは少ない。 結末がどうなるかを知っているからだ。 = The vocaburary of emotion, The Study of Javanese socialization process - Hildred Geertz 1959から引用 (∫)米国人にとっては、その人物の氏素性よりも何をなしたかということの方が重要な意 味を持つ。地位よりもプレステージのほうに高い評価を与えるのである。インドネシア人 はその人間の社会的地位を重視する。だからbiar garing asal garang。薄給でも社会的 身分の高い公務員や軍人になりたがる。 (∫)米国では、地位があることとプレステージがあることはそれぞれが並立的に価値を持 っているものの、インドネシアではどんなに低くても地位があることのほうに値打ちがあ る。 (∫)米国人の思考方法は分析的且つ帰納的。事実を系統立て、線形論理を使って結論に達 する。インドネシア人はまず全体の問題をベースに置き、関連事項をそこに加えて、線形 論理を使わない文脈論理で結論を出す。日本人は循環論理を使う。 (∫)米国人はポジティブシンキングを重視するオプチミストだ。イニシアティブを持つこ とが期待され、現状改善が義務にされ、進歩するためのチャンスがだれにも与えられる。 自己満足する者はあまりおらず、常に前進することがオブセッションになっている。 インドネシア人も概してポジティブシンキングなオプチミストだ。ただし直面している問 題を軽く見すぎる点に行き過ぎがある。アクションに移ったなら、あまりエキサイトする ことなくローキーで事に当たる。 [ 続く ]