「ヌサンタラのコーヒー(32)」(2023年12月05日)

東ジャワ州のコーヒー産地は南部山岳地帯がメインをなしている。県名で言うならマラン
・パスルアン・シトゥボンド・ボンドウォソ・バニュワギといったところ。かつてジャワ
州知事は「国際的に高い知名度を誇るJava coffeeはそれらの土地で生産されたものだ。」
と語った。ジャヴァプリアンガーが衰退したあとの時代を東ジャワの山岳部が担ったこと
を州知事は述べているのだろう。

またDampit Robusta Coffeeという名前も世界的な知名度を持っている。ダンピッはジャ
ワで生産されていたアラビカ種がロブスタ種に切り替えられたとき、そのスタートを切っ
た土地の名前だ。1900年に今のマラン県ダンピッ郡でそれが行われた。


オランダ人はベルギーのブラッセルにあるl'Horticulture Coloniale Brusselでコンゴ産
コーヒーの苗150本を2フランで手に入れ、1900年6月30日にロッテルダム港か
ら東インドに向かうRotterdamsche Lloyd の蒸気船Gendeh号でスラバヤのタンジュンペラ
ッ港に送った。

1900年9月10日、Cultuur Mij Soember Agoeng社に届いた苗は取締役会書記のTuan 
Rauwsが植え付けを手配し、マラン市の東南に広がるスンブルアグン農園に植えられた。
届いた時駄目になっていた苗は7本だけで、143本の苗はスンブルアグン、ウリギンア
ノム(Wringin Anom)、カリバカル(Kalibakar)の三地区に植えられた。現在その三地区は
すべてマラン県ダンピッ郡に含まれている。

ダンピッでのロブスタコーヒー生産は今でも続いている。歴史の香りまでが付着している
ダンピッコーヒーを味わってみたければ、マランへ行ったついでにダンピッにも立ち寄る
べし。ダンピッはマラン市からおよそ40キロ南東に離れた町だ。ルマジャンに向かう街
道が通っている。


2018年12月にコンパス紙が推薦したダンピッロブスタコーヒーワルンはここ。ダン
ピッの町中のパジャン通りにあるワルンレスタリ(Warung Lestari)だ。ダンピッの市場か
らあまり遠くない。

その店舗は1990年にコーヒーワルンとしてオープンした。それまでは生活基幹物資を
扱う店だった。コーヒーワルンには近隣一帯の住民がたくさんやってきて、コーヒーを愉
しみ、話題に花を咲かせ、夜遅くまで賑わった。店主ヘリさんは従業員が毎晩遅く帰宅す
るのを気の毒に思い、閉店を16時にした。開店は午前8時だ。だからワルンレスタリへ
夜行っても、コーヒーは飲めない。

ダンピッの町にコーヒーワルンはおよそ30軒あるが、ワルンレスタリがアイコンの座を
占めている。他の町からもこのワルンを目指して客がたくさんやってくる。「だから値段
は高くできないよ。」とヘリさんは笑う。

メニューはインドネシアブサールとインドネシアクチール。ブサールは大きめのカップで
一杯4千ルピア、クチールは小さめのカップで一杯3千ルピア。もちろんこの店特選のコ
ーヒー豆も売ってくれる。飲んでみて気に入れば、それを買って帰ればいい。ダンピッ産
の豆をブレンドした特選コーヒーは1キロ6万ルピア。もちろん他地方のコーヒー豆も用
意されている。リントン、アチェ、バジャワなどだ。だが、ここだけにしかないダンピッ
特選コーヒーのほうが希少価値があるのは間違いなさそうだ。[ 続く ]