「ヌサンタラのコーヒー(36)」(2023年12月11日)

このリゾートでは1927年に建てられた多数の従業員社宅とオランダ人管理人のために
1937年に建てられた高床式の大邸宅がリゾートゲストのための宿泊施設に使われてい
る。ヨーロッパの山岳地方を思い出させるような外見をしている管理人邸は豪華な作りに
なっていて、周辺環境の中に置かれて一幅の絵になる雰囲気を醸し出しており、ここでも
昔の農園主の暮らしの一端をなぞることができそうだ。

Jampit Houseと呼ばれているその管理人邸は標高1,450メートルの高所にあり、内部はア
ンティ―クでロマンティックな雰囲気に満ち満ちている。下界の喧騒から遠く離れた静謐
な山上で穏やかに流れる時を味わいながら過ごす日々は素晴らしい体験になるはずだ。そ
んな高所にあるために雨季から乾季に代わる時期には夜明け前に気温が4℃まで下がるこ
とがあるという話で、これもエキゾチック体験のネタになるかもしれない。


2000年代初期にこのリゾートを訪れた外国人観光客は圧倒的にフランス人が多かった
そうだ。2001年には657人のフランス人がこのリゾートのゲストになり、2002
年はそれが954人に激増した。翌年は413人に低下したものの、2004年には再び
924人という大人数になった。フランス人以外の外国人観光客はだいたい2百から3百
人程度で大きな増減は見られなかった。

一方のインドネシア人ゲストはその間、2001年が1,863人、2002年1,33
6人、2003年1,486人、2004年1,546人といった推移を示した。

確かにこのリゾートはイジェンのブルーファイアを見に行くにも絶好の環境を提供してく
れている。このリゾートへ行くにはシトゥボンドとボンドウォソをつなぐシトゥボンド街
道Jl Raya Situbondoから枝分かれしているイジェン火口通りJl Kawah Ijenに入ってその
道をどんどん走る。例えばボンドウォソ市内からスンポルまで165キロの距離を乗合バ
スが走っている。スンポルの町からリゾートまでは、イジェン火口通りから枝分かれした
道を1キロ進めば到着するのだ。

イジェン火口通りはスンポルを越えてからどんどんイジェン火口に近付いて行く。イジェ
ン火口の入山口に当たるパルトゥディンに達するまで20キロ足らずの距離でしかない。
そしてこのイジェン火口通りは更にパルトゥディンから下界のバニュワギの町まで70キ
ロの距離をまったく同じ名前で繋いでいるのである。

つまりこのリゾートに宿泊すればイジェン火口まで距離がたいへんに近いということだけ
でなく、バニュワギ側の宿泊施設はパルトゥディン一帯にあまりよいところがないという
ことを考え併せるなら、バニュワギの町中に投宿してパルトゥディンまで往復するよりも
このリゾートを利用するほうが快適さは格段に異なるのではないかと誰しもが思うにちが
いあるまい。


ここで生産されているのは世界的に有名なJava Coffeeだとリゾート関係者はみんな言う。
プリアンガー高原で生産の始まったアラビカ種のジャワコーヒーが世界を震撼させたあと、
ジャワコーヒーがロブスタ種に切り替わっていった後になっても、ここからジャワアラビ
カコーヒーが世界に送り出され続けたのである。年間生産量1千トンの9割が海外に輸出
されているのだ。

リゾートマネージャーは利用客にコーヒー収穫ツアーとコーヒー加工プロセス見学ツアー
を勧めている。この農園のアラビカコーヒー大収穫期は7〜8月であり、その時期に行わ
れる大収穫を一度でも目にすれば、大農園で行われる収穫の真の迫力がどんなものである
かを実感できるとマネージャー氏は言う。[ 続く ]