「クンタオ(20)」(2023年12月15日)

ワン・チョッジュワン先生
稔り豊かな金持ちになれば同胞に恵みを与えるのが人間の道であるというのに、汝は女色
に狂って金を悪事にばかり使っている。天帝はすべてお見通しであり、罰が汝に下る日は
近い。

我は汝に警告を与えるために来た。天罰が汝に下る前に改心せよ。汝がこれまでに虐げた
者のだれがいつ汝に刃を向けるか、それは天帝だけがご存知だ。我にも汝の耳や鼻をそぎ
落として罰を与えることがいつでも行える。昨夜に我がそれを行なえば、今ごろ汝は形の
変わった自分の顔を見て、泣いていることだろう。

汝がホー・アンキウンの娘を手に入れたいためにその父親を虐げていることを世間のだれ
もが知っている。今すぐにそれをやめなければ、汝は一生後悔することになる。我は汝の
タンスから4百フローリンだけ取った。それは我自身のためでなく、汝が虐げた者のため
にしたことだ。我は泥棒ではない。もし泥棒なら、汝の全財産はもうタンスから姿を消し
ているはずだ。これは汝への警告なのだ。

汝はスマランの華人社会に不穏をもたらしている虎である。女たちから平穏な暮らしを奪
い、不幸をもたらす虎なのだ。虎は宋江に退治される運命にある。汝はその様子をもう夢
の中に見た。汝がこれまでの振舞いを悔い、心を入れ替えて精進するなら、天帝の罰は下
るまい。だが改心しないなら、汝は我を敵にすることになる。

天帝は汝を見ている。改心し、慎み、善を施せ。さもなければ、汝は我を警告者でなく、
敵対者として迎えることになる。
三斑点より


手紙を読み終えたチョッジュワンは震え上がった。タンスを調べたところ、鍵は普通にか
かっているし、どこかをこじ開けた形跡もない。だが手紙に書かれている通り、紙幣が4
0枚抜き取られている。他にも銀貨やダイヤなどの宝石も置いてあったのだが、他のもの
にはまったく手が付けられておらず、手紙の内容が真実であるのは疑う余地がないことを
チョッジュワンは確信した。

かれは警察に届け出て三斑点と名乗る盗賊を捕まえてもらおうと思ったのだが、考え直し
た。警察に訴えれば事件の背景が洗い出されてこれまでの悪事を公開することになるだろ
う。このできごとは妻にも知らせないほうがよい。かれはポテヒ人形と手紙をポケットに
隠した。

だがしかし、キムキョッを手に入れるための段取りはもうホームストレッチに差し掛かっ
ているのだ。邪魔だてをするアンキウンは既に監獄に送り込んだ。あとはキムキョッの母
親をうなずかせれば美しいキムキョッが自分のものになる。あの母親は怖がりの女だから、
夫が外国に島流しになると言って脅かせば震え上がって助力を求めて来るだろう。そこで
わしが助け舟を出す。その交換条件がキムキョッの身柄だ。


そこまでこの企画を進めて来てあともう一歩というところなのに、また別の邪魔者が現れ
た。ここまで段取りを進めるのにたいへんな大金を使っている。いまやめたらあの大金が
無駄になってしまう。だが三斑点と名乗る正体不明の怪人は侮れない男のようだ。こやつ
がわしに危害を加えないようにしてキムキョッを手に入れる妙案はないだろうか?チョッ
ジュワンはその対策探しに没頭した。しかし考えても考えても妙案は浮かんでこない。

こんなときは気分を変えるに限る、と考えてチョッジュワンはロンボッ小路に向かった。
ロンボッ小路にはかれの別宅があり、妾のひとりがその家の主人になっている。そこへ行
ってゴロゴロしていると、クンチュンというニックネームで呼ばれているかれの手下がや
ってきた。[ 続く ]