「ヌサンタラのコーヒー(79)」(2024年02月19日)

東ジャワ州ジュンブルJember県グミティル山のレストハウスで、グミティルコーヒー農園
で採取されるコピルアッが供されている。ルアッはその農園のアラビカ種の実もロブスタ
種の実も食べるので、そこではその両方を用意して客の好みに応じている。アラビカルア
ッはカップ一杯5万ルピア、ロブスタルアッは4万ルピアだ。

ジュンブルにはインドネシアコーヒーカカオ研究センターがあり、百ヘクタールの実験コ
ーヒー農園でアラビカ種が栽培されている。同センターはその農園の中に檻を設けて10
頭のルアッを飼育し、コピルアッを生産している。

2011年のコンパス紙記事によれば、檻は床面積1x1メートル高さ2メートルのもの
から大きいのは3x5メートル高さ2メートルで生えている6本のコーヒー木を中に包含
しているものまである。そこではルアッの飼育方法も調査されており、特に飼育ルアッの
栄養面での最適条件を標準化する努力が払われている。ルアッにはコピルアッ生産のため
のコーヒーの実だけでなくパパヤやバナナも与え、三日に一度は塩魚とニワトリを食べさ
せているとの説明だった。

コ−ヒー収穫シーズンになると檻の中のルアッは摘んだばかりの完熟実を1キロ与えられ
る。しかし1キロの実から得られる排泄豆は2〜4百グラムにすぎない。収穫期を通して
一頭のルアッが生産するコピルアッ豆は14キロなのだそうだ。

この研究センターは調査研究のために作られたルアッコーヒーを輸出市場にオファーして
おり、諸外国に輸出した実績を現実に持っている。学術的な研究センターという名前を付
けながら、研究のために作られた物で商売をしているということを不純として断罪する社
会もあるだろうが、インドネシアにたくさんいるコピルアッ農民たちにとって研究センタ
ーのオファー価格は、かれらがバイヤーと売買交渉をする際の標準価格として使われてい
るのである。バイヤーがいくらハードネゴをしても、研究センター価格をはるかに下回っ
て生産者からコピルアッを手に入れるのはむつかしい。


西ジャワ州プガレガンのコーヒー農民組合長も良質のコピルアッを生産するためにルアッ
の健康には特別の注意を払っていると語っている。かれらは飼育しているルアッに毎朝地
鶏卵とハチミツを与え、夕方にはパパヤとアップルマランと呼ばれているグリーンアップ
ルを食べさせている。しかも不定期だが時には、地鶏用の餌を与えたり生きているタウナ
ギを食べさせ、あるいは川魚もルアッに食べさせる。

「良い品質のコピルアッを得るためにはルアッの健康状態が決め手になる。ルアッは腹が
へったからコーヒーの実を食べるのではない。コーヒーの実が持っている栄養素が必要だ
からルアッはその実を食べ、消化しないまま豆を排泄するのだ。」組合長はそう発言した。
その組合に参加している組合員は163人いて、103Haのコーヒー栽培用地を運営して
いる。普通のコーヒー生産量は年間120トンで、それとは別に4.2トンのルアッコー
ヒーが生産されている。


東ジャワ州ボンドウォソ県のPTPN XIIは2007年からコピルアッの開発に着手した。コ
ピルアッの量産体制を作り始めたということだろう。品質が測定可能で均一になるように、
標準作業書を作って量産する事業計画を立てたのである。

ムサンルアッを飼育して繁殖させるために同社は飼育専門家と獣医を雇用してその体制を
組んだ。野生のルアッを捕らえて飼い慣らすのだ。しかしこの野生動物は人間に飼われる
ことを嫌うために捕まった直後からたいへんなストレスを抱え込む。だいたい1〜2週間
の間に、ストレスに負けた個体は死ぬという話だ。

運よくそれを乗り越えることができれば、かれらには檻の中でのコピルアッ生産係の暮ら
しが始まる。2009年の同社情報では、同社の飼育しているルアッの頭数は78匹に達
したそうだ。

コーヒー収穫期にはコーヒーの実が毎夜3キロ与えられると記事に書かれている。それは
収穫期の話であり、非収穫期にはパパヤやバナナなどの果実が与えられているから一年中
コーヒーの実だけを食べさせられているわけでもないようだ。[ 続く ]