「ヌサンタラのコーヒー(81)」(2024年02月21日)

コピルアッにする実はアラビカ種だけにした。ロブスタ種では価格がアラビカ種に負けて
しまう。この地方では元々オランダ時代の遺産としてロブスタ種がメインを占めていたが、
中央政府がアラビカ種への栽培転換を打ち出したことによって2007年にクパヒアン県
庁がこの組合にアラビカ種のコーヒー木2千5百本の援助を与えたのだ。アラビカ種の実
に不足が起こっても、コピルアッ用の材料を確保するために他の組合から購入することも
できる。この組合は既に、ランプンから100キロのコピルアッのオーダーを受けてそれ
を納入した実績を持っている。

ルアッは一頭当たり一日3キロのコーヒーの実を食べる。ところが排泄豆は最初100か
ら150グラム程度しか取れなかった。三年後、排泄豆の量は一頭当たり200〜250
グラムに増加した。その豆を洗浄してから天日乾燥し、煎って粉末にする。

組合員のひとりは、コピルアッの生産を始めてから生活レベルが目に見えて向上したと語
っている。日々の生活需要を満たすのに困る状態が時々起こったのはもう昔語りになって、
今では十分な貯蓄も可能になり、かれは1.5Haだった自分のコーヒー農園を2Haに拡張
したそうだ。


南スマトラ州でユリアナ女王に愛されたコーヒーの本家を競っているスムンドとパガララ
ムでもルアッの排泄物が採集されている。そのどちらの土地でも、コピルアッは天然自然
の産物であり、檻ルアッによる生産品ではないと地元民は強調している。

パガララムの若いアントレプルヌールが天然コーヒー事業を興した。普通のオーガニック
粉末コーヒーと一緒にコピルアッも手掛けている。製造よりも販売に重点を置き、この地
方のコーヒー生産農家がみんな自家消費用と近隣需要に向けて少量を生産しているのに任
せて、注文に応じるのにコーヒー生産農家の生産品を当てている。だからコピルアッの生
産量は月50キロくらいにしかならないそうだ。

結果的にかれは地元のコーヒー生産農家が作る粉末コーヒーの販売コーディネータの役割
を担うことになった。かれの販売手法のメインは通信販売で、東ジャワ州のある県令から
コピルアッの注文が入ったこともある。顧客に満足してもらうために、かれの商品はすべ
てパガララムの自然が生み出した天然で純粋のものであることを強調している。

パガララムではルアッがまだたくさん棲息していて、毎朝コーヒー農園の土の上に排泄物
を置いて行ってくれる。ルアッを檻に入れて飼育する必要などまったくありません、とか
れは語っている。


ランプン州西ランプン県リワのコーヒー農園でも、コピルアッが採集されている。ルアッ
の排泄物はコーヒー収穫期になるとコーヒー木の幹や枝あるいは地上にたくさん落ちてい
る。コーヒー農民たちはその採集を楽しんで行っている。農民の一人ミナリアさん39歳
は、自分で拾ったものを洗って粉末にし、自分で飲んでいると語る。そんなに大量に採れ
るものではないのだそうだ。

檻ルアッでない野生の暮らしをしているルアッを地元のひとびとはluwak hutanと呼んで
いる。コピルアッフタンは強いアロマを持ち、コクがあり、酸味は弱い。地元パサルで売
られているものには、他のアロマが加えられたものも少なくない。ドリアンのアロマを加
える者もいるし、土の香りが感じられるエキゾチックなものもある。

コピルアッはカフェインが少なく、酸味も弱い。普通のコーヒー豆のカフェイン量と酸味
の強さを落とすために何年も寝かせるようなことが業界の一部でなされているが、コピル
アッはもう最初からそうなっている。だからコピルアッを一日に10杯飲んだところで健
康に悪影響は及ぼさない、とコピルアッ販売者は宣伝している。[ 続く ]