「ヌサンタラのコーヒー(88)」(2024年03月01日)

バンリ〜キンタマニ街道沿いのバンリ県スリバトゥにあるワルンコピ「フタンバンブ」は
最上のコピキンタマニを用意してコーヒーを愛好する客の来訪を待っている。山稜の竹林
とコーヒー園の風景を見せてくれるこのワルンはワヤン・マドゥラさんが2009年に農
園を開き、その産物を客に楽しんでもらう場所として2012年に開いたものだ。0.2
4Haのコーヒー園にはおよそ150本のコーヒー木が植えられており、客は農園内を散策
することもできる。

マドゥラは農園で育った赤い実を摘み、自らそれを粉末コーヒーに加工している。実はま
ず数時間乾燥させてから豆を取り出す。そして薪の炉で豆を煎る。薪は火力の出るクロー
ブの廃木などの硬い木を使い、弱火で煎るのである。それを挽いて粉にし、小さいカップ
に置いて熱湯を注ぐ。湯も薪の炉で沸かしたものが使われている。木で沸かした湯はソフ
トですから、とカデッ・パルウィニさんが語る。


自前の農園で採れるアラビカ種のコピキンタマニだけが商品だというのに、ワルコップ「
フタンバンブ」には15種類のメニューがある。ハーバルコーヒーがバリエーションとし
て用意されているのである。ヴァニラ・カカオ・シナモン・カルダモン・レモングラス等
々。それらのハーブもマドゥラのコーヒー園の中で栽培されている。そして言うまでもな
く、お値段がひとまわり違っているコピルアッも。そう言えば、この農園にはルアッが一
頭だけ檻で飼われている。ははあ、コピルアッはそこで作っているのか。

「いいえ、違いますよ。」とマドゥラは否定する。ルアッという動物を見たことがない客
に見せるための展示物なのだそうだ。この辺り一帯に野生のルアッはたくさんいて、檻に
入れて確保しなければならないような状況ではない。コピルアッの真髄は野生ルアッが自
分で選んだ実を食べるのが鍵になっているから、この近辺のコーヒー生産者はみんなルア
ッが何を食べようが問題にしない。果樹の実を盗もうがニワトリを盗もうが、野生ルアッ
には食べたいものを食べさせなければならない、とマドゥラは語った。かれのワルンで出
されるコピルアッは農園で採取されたものなのだ。この近辺でコピルアッを飲ませるワル
ンは8軒ある。檻ルアッ製と農園採取のものは味が違うのだとかれは断言している。
[ 続く ]